クレオパトラの体の一部があなたの体に!?

 水の「材料」は水素と酸素だけ。そうかと思えばその2つに炭素(C)も加えて組み合わせを変えると、メタンになったりデンプンになったりします。よくよく考えるととても不思議じゃありませんか?

 麻生さんは原子と分子の関係を「ブロック遊び」に例えます。

 「原子は単体のブロックのようなもので、分子はそれが何個も組み合わさったものです。おもちゃのブロックに形や色の違うパーツが何種類もあるように、原子にも酸素や水素、炭素などのバリエーションが存在し、それぞれ少しずつ構造が違います。今のところ、自然界に存在することが確認されている原子(元素)は92種類です」

 “万物のパーツ”がたった92種類しかないというのも、意外ですよね。もっとも人工的に合成したものも含めれば元素は100種類を超えます。最近、日本の理化学研究所が113番目の元素の合成に成功したことが国際機関に認定され、この新元素に名前をつける権利が日本に与えられました。

 ここで一つ押さえておきたいポイントは、同じ種類の原子、例えば酸素原子であれば一つひとつはどれも全く同じだということです。

 「ブロック遊びのパーツの場合、同じ種類のそれでも一つひとつは微妙に違います。よく見ると小さな傷が付いていたりしますからね。しかし原子にも、原子が組み上がった分子単体にも、個性というものが全くありませんし劣化もしません。ごく低い確率で突然『崩壊』することはありますが」

 どれも全く同じでめったなことでは変化しないからこそ、原子はあらゆるものの素材になるということ。かつてクレオパトラの一部だった原子が、巡り巡って今、あなたの体を作っている、なんてことだってないとはいえないのです。

(取材・文/手代木建)