イラストレーターの上大岡トメさんは、長女が大学卒業後に大きく進路を変え、選んだ道に驚きつつも、著書『子どもがひきこもりになりかけたら』の取材を通して学んだ通り、まずは長女の選択を受け止めようとしたと言います。そんなトメさんと、認定特定非営利活動法人育て上げネットの理事長工藤啓さん、同NPO法人が運営するニート・ひきこもりの子をもつ親の会「結(ゆい)」事業責任者・相談員の蟇田(ひきた)薫さんに、日経DUAL編集長の羽生祥子が、子どもがひきこもりになったときの具体的な考え方と予防法を中心に伺います。「『ひきこもり』になる子どもの親には共通点がある」に続く、後編です。

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<座談会出席者>

上大岡トメさん(以下、トメ)…イラストレーター。22歳の長女と、大学2年生の長男の母親。「2人が大学に進学して実家を出たら子育ては卒業」と思っていたが、就活に消極的な長女の様子を見て不安に襲われる。

工藤啓さん(以下、工藤)…15歳から39歳までの若者を対象に「働く」と「働き続ける」を支援する認定特定非営利活動法人育て上げネットの理事長。4歳、2歳、0歳の双子と4人の男の子の育児にも力を注ぐ。

蟇田薫さん(以下、蟇田)…育て上げネット若年支援事業部担当部長、産業カウンセラー。同NPO法人が運営する、ニート・ひきこもりの子をもつ親の会「結」の事業責任者・相談員。

羽生祥子(以下、羽生)…日経DUAL編集長。小学3年生の長女と小学1年生の長男の子育て中。

失職した子どもが家にいられる期限を決める

認定特定非営利活動法人・育て上げネット理事長・工藤啓さん
認定特定非営利活動法人・育て上げネット理事長・工藤啓さん

羽生 最近、子どもが仕事をやめたことに悩むお父さんやお母さんに会います。「勤務条件がどんどん下がる」とか、「うちの子は悪いループにはまっているんじゃないか」といった不安を口にされます。わが子が、せっかく入った会社をすぐに辞めたときは、どういう反応をすればいいのでしょう?

工藤 正解があるわけではないですが、会社を辞めること自体は別に問題はないと思います。実家で両親と共に暮らすことになるのであれば、“期限切り”はしておいたほうがいいと思います。

 やはり今までの状況とは変わるわけですから、「半年、あるいは1年まではいい」「それを超えた場合はどうするか」といった約束をしておくといいと思います。

羽生 無期限に「ありのままのあなたでいいのよ」と言うのはよくないんですね?

工藤 そのご家庭の経済力にもよりますよね。ありのままを受け入れてもいいのは、親として、経済的に無期限で受け入れることが本当に保証できる場合のみですね。もちろん、永久に保証できるなんてことはないわけです。

蟇田 「無期限でもいい」と言ってしまうと、本当にそれでいいと思う子もいるんです。その結果、「働かない子どもが家に10年いる」というケースも実際にありますから、親が精神的・金銭的に耐えられる期限は決めておいたほうがいいでしょうね。

工藤 親が経済的に追い詰められたときに初めて、子どもに「出ていけ」と言うと、言われた子どももびっくりしますよね。そうではなく「1年間は家にいてもよしとする。でも、そこから先は一緒に住むのは私達も耐えられないかもしれない」と前もって言っておけば、1年間のバッファーがありますからね。