全盲で司法試験に合格した日本で3人目の弁護士、大胡田誠さん。半生を綴った著書『全盲の僕が弁護士になった理由』(日経BP社)は松坂桃李主演でドラマ化され、オンデマンド放送でも人気を博しています。離婚、相続、交通事故、借金問題などのトラブルを解決する「町医者のような弁護士」(大胡田さん談)として活躍しながら、プライベートでは全盲の声楽家である妻の亜矢子さんとともに、2人の子ども達の育児に奮闘中。半同居する義母をはじめ、様々なサポートを受けながら仕事と育児を両立しています。子ども達のはしゃぐ声と笑い声の絶えない大胡田家にお邪魔し、「目が見えないからこそ、見えてきた」大胡田家の子育てについて伺いました。

子どもを持つ前に、兄の赤ちゃんでおむつ替えの練習

弁護士の大胡田誠さんと、長女のこころちゃん
弁護士の大胡田誠さんと、長女のこころちゃん

日経DUAL編集部 大胡田家は、長女のこころちゃんが3歳、長男の響くんが2歳です。まずは、お子さんが生まれて「ここが想像と違った」というところがあったかどうかを教えてください。

大胡田誠さん(以下、誠さん) 僕は平日の仕事が激しいので、休みの日はできれば「ぼーっ」と寝ていたいんですね。それが許されなくなった(笑)。休日なのに朝6時半にドーンとおなかに乗られて……、「もっと寝かせてくれ~」みたいな。

 休日は、家の中でかくれんぼをしたり、マンションの敷地内の公園に行って遊具で遊んだり。クリーニング屋さんにワイシャツを出しに行くのに、長女に道案内をしてもらったり。そんなふうにしながら1日を過ごしています。

亜矢子さん 子ども達が赤ちゃんだったころは、本当に大変なことばかりでしたね。私には兄がいまして、兄には8歳と6歳になる子どもがいるんですが、その子達が生まれたときに、「いずれ必要になるから」と私もおむつ替えなど、実際にやらせてもらったことがありました。でも、何度かです。失敗するのが怖かったですし、実験台みたいな甥、姪もかわいそうですしね。見よう見まねでやってみる、ということができませんから、ひとつひとつ丁寧に言語化して教えてもらって、そこで習ったことを私が夫に伝えました。わが子が生まれたら、主人も兄夫婦から直接教えてもらいました。

誠さん そうそう、ミルクの作り方とかね。お湯をこの線まで入れて、一方で水はここまで入れて混ぜる、とか。

亜矢子さん 兄夫婦は健常者なのですが、2人とも、どうやれば私にちゃんと伝えられるのか、私がやりやすいのかを私の立場に立って教えてくれました。「女の子はうんちが股の間に入りやすいから、こうやって拭いてあげるんだよ」とか、「男の子はおちんちんを持ち上げて、下の方も拭いてあげてね」とか。紙おむつも「新しく使うものを下に敷いてから取り替えたほうがいい」とか、「赤ちゃんの服にはボタンがたくさんあるんだよ」とか……。

 自分の子が生まれてきてからは、毎日そうした作業をすることになったわけですが、「そうか、自分の子だから最初は失敗したって別にいいのか!」って思いました(笑)。そんな気持ちになれるまでには、数日かかりましたが……。

―― 考えてみると、子どものお世話について、そこまで丁寧に教えてもらえることって実はあまりないのではないのかと感じます。私も出産した日に「おむつってどう替えるのっ?」と一瞬パニックになった記憶があります。