ご近所さんが「困ったことがあったら言って」と声を掛けてくれた

亜矢子さんが座る席の後ろには、盲導犬セロシアちゃんのケージがあった
亜矢子さんが座る席の後ろには、盲導犬セロシアちゃんのケージがあった

―― 夫婦と赤ちゃん、盲導犬の都心での暮らしは、いかがでしたか?

誠さん 今とはまた違う集合住宅に住んでいたのですが、助けてくれる人が近所にたくさんいたんだよね。

亜矢子さん そう。それも、元からの友達ではなく、ただ近くに住んでいた方々、というだけなのに「困ったことがあったら言ってくださいね~」と言っていただけて。こちらも甘えて「じゃあ、いいですか?」って(笑)。

 目が不自由で困るのは、赤ちゃんの爪切りでした。そのため、爪切りは定期的にお願いしていました。あと、赤ちゃんが嘔吐したり、離乳食を食べてくれなかったりしたときなどにも助けてもらいました。

―― 離乳食は何が問題だったのですか?

亜矢子さん 食べさせてくれる人が変わると食べてくれたので、気分的な問題だったようです。

見える親も、見えない親も、初めての育児であることは同じ

―― ご親族と離れても、ご近所のサポートもあり順調に子育てを進めて来られたわけですが、共働き世帯に必ず降りかかる問題として、保育園問題があります。大胡田家はどのように乗り切ったのでしょう?

亜矢子さん うちは年子なので、こころの保育園探しのときは既に響がおなかにいたんです。第6希望まで記入できたので、少なくとも第3希望園までは見学に行こうと思いました。背中にこころをおんぶして、おなかには響がいて「みんなで行きましょう」状態でした(笑)。

 申し込みに行って分かったのは、母親が障がい者であっても、妊娠しているということで点数が引かれてしまうということ。持ち点の20点が8点になってしまうと言われました。親が妊婦である場合、保育園に入れても出産3カ月後には退園させなければならないということも分かり、すぐに夫に電話しました。

誠さん 区の担当者に連絡した記憶があります。「面倒臭いのが来たな」と思われたかもしれませんね(笑)。

亜矢子さん 障がいを理由に申込書を提出し直そうかと思っていたのですが、その後、区の担当者とお話して、書類はそのままで申請することにしました。審査の結果が届き、4月に新設される第6希望の園への入園が決まりました。「どんなところか分からないけれど、入れただけでも良かったよね」と話していたところ、第3希望にしていた保育園で空きが出たという連絡がありました。

 どちらの園も徒歩40分程度で迷ったのですが、結局第3希望のほうにしました。園長先生が協力的で「私はこれまで見えない子どもを預かったこともありますし、見えないお母さんとお付き合いしたこともあります。目が見える、見えないは関係ありません。みなさん、初めての子育てなのですから」と言ってくださった。

―― そういう方が園長先生でいらっしゃると安心ですね。

誠さん そうですよね。

亜矢子さん 新設の保育園のほうは、施設は新しくてきれいでも、みなさんバタバタされていたかもしれません。そこに入園したら、お互いが大変になってしまうんじゃないかな、とも思ったのです。結局、第3希望のほうの保育園に入園し、今もお世話になっています。