1871年に創立されたアメリカの名門私立女子大、スミス・カレッジ。かつては男子校が主流だったアイビー・リーグに対し、全米から優秀な女子学生が集まるエリート女子大群は「セブン・シスターズ」と呼ばれ、スミス・カレッジはその一角を成しています。50専攻、1000講座の中から自由に学べるリベラルアーツ校としても知られ、『風と共に去りぬ』で知られる作家のマーガレット・ミッチェルや上院議員のタミー・ボールドウィンなど、卒業生からは政財界から芸術分野まで多彩な分野で活躍する人材を輩出。第11代学長として大学を率いるキャスリーン・マッカートニー氏に、同大学のリーダーシップ教育や、女性が社会で活躍することの意義について伺いました。

日経DUAL編集部 スミス・カレッジは、長い歴史の中で卒業生から多くのリーダーを輩出してきました。大学ではどんな点に重点を置いて、女性にリーダーシップ論を教えてきたのでしょうか。

キャスリーン・マッカートニー学長(以下、学長) フェミニストの動きというのは歴史が浅く、色々な進歩を遂げていく上ではまだ初期段階にあります。スミスに入ってきた学生に対しては、全職員が「これからの女性のあり方」に重点を置きながら教育しています。彼女達は学生生活を通して、男女の既定の役割意識にとらわれずに多くのことを学び、経験することができます。

 女子大ですから、生徒会長から学生新聞の編集長まで、上に立つ役割はすべて女性が務めます。つい最近卒業した人であれ、50年前に卒業した人であれ、卒業生が口をそろえるのは「大学時代に自信を培うことができ、自分達がどう外に向かって声を上げればよいかを学んだ」ということ。スミスで学生時代を過ごした女性は、男性に対して女性が一歩引いてしまうといった先入観を持つことがありません

 授業ではリーダーシップを養ったり、ビジネスにおける競争力を高めたりといった、女性リーダーになるためのプログラムを数多く用意しています。工学部があり、理系に強みを持つことも特長です。また、ワークショップなど教室外での活動も豊富に体験できる他、周辺の大学と5校間提携を結び、提携校内であれば、どの大学の授業も受けることができます。アイビー・リーグの一つ、ダートマス大学のタックビジネススクールと提携したキャリア形成プログラムもあります。

 女子大から多くのリーダーが輩出されていることはよく知られていますが、アメリカの国会では女性議員の2割が女子大の卒業生です。女子大出身者が女性全体の5%であることを考えると、非常に比率が高いことがうかがえると思います。

―― スミスの卒業生にはどんなジャンルで活躍する人が多いのですか。

学長 4万8000人以上の卒業生が多岐にわたる分野で活躍しています。特にニューヨークの金融業界に多い他、政府関係では上院議員のタミー・ボールドウィン、さかのぼったところではフェミニズム運動の活動家グロリア・スタイネム、作家のマーガレット・ミッチェルなどが著名です。大使を務める人もたくさんいます。美術館の要職に就くなど、芸術分野で活躍する人も多いです。

―― そもそもアメリカの女子大生は、卒業後は仕事と家庭を両立していきたいと誰もが考えているのでしょうか。

学長 専業主婦になりたいという願望を持っている女子大生は少ないと思います。スミスでいえば、卒業生の4分の3ほどが大学院に進みます。みな意欲的に社会にかかわっていきたいという考えを持っていると思います。

 私達の世代では仕事と家庭の両立は大きな課題でしたが、今の若い人は私達のような母親を見て育っているので、だいぶ道が開かれていることが背景にあると思います。社会的に、子どもがいても女性は子育てをしつつ働きに出るのが当然という空気があります。私自身にも30歳と33歳の娘がいるんですが、1人は子どもを産んで休暇を取った後に広告会社に復帰。もう1人は弁護士で、来月出産予定なんですよ。