音楽って体全体で楽しめるものだと気づいた

――次のテーマは「キャリアの悩み&楽しみ」です。今井さんは、色々なイベントや講演会で手話の歌も披露されていますね。

今井 聞こえない人達がコミュニケーションを取る1つの手段として手話があることを伝えながら、手話歌を歌ったりしています。息子のために作った『なんくるないさ』という歌があります。

――これが泣ける歌なんですよねぇ。礼夢くんが生まれたことで、歌に対する思いや歌手活動は変わりましたか。

今井 聞こえない子ども達に音楽を聞かせると、体とか心とかでものすごく感じているんですよ。楽しそうにしてるんです。その姿を見ると、音楽や歌って、耳だけで聞くのではなくて、体全体で楽しめるものなんだな、という新しい学びがありました。

――礼夢くんと一緒に歌っているステージも拝見しましたが、音楽っていろんな形で楽しめるんだということが伝わってきました。

今井 障がいがあるからこれができないとか、決めつけてほしくないと思います。障がいのあるなしにかかわらず、子どもにはいろんな経験をさせてあげたい。たくさんのメニューを見せてあげることが母の役目だと思っています。そこから選ぶのは、子どもです。

――親として、何かをおすすめする場合もありますか。

今井 もちろんありますが、何事もメリットとデメリットがある。双方含めて話しますね。今、目の前にある問題に対して彼が迷っていれば、親として様々なメニューを差し出すという感じです。

――障がいを持つ子どもの親御さんは、今井さんの明るい姿を見て、勇気づけられると思います。

今井 つい、子どもの将来を考えて心配になってしまうんですが、今を一生懸命生きることが未来につながると思うんです。だから、先のことばかり考えて不安になるよりは、今を見つめて一生懸命子育てしているほうがいいんじゃないかなと私は思います。

――親は「中学受験のために4年生から塾に行かなきゃ」とか、先々のことばかり考えてしまいがちですね。

山口 今井さんに沖縄の小学生のころの生活についてお聞きしたら、とてもすてきな校長先生がいらしたそうです。「歌手になりたい」という夢に「そんなの、なれるわけない」なんて言わずに、「なれるよ」って声をかけてくれて、児童朝会などで歌わせてくれたそうです。それを聞いて、ああやっぱりそういう学校でありたいな、と私は思いました。子どもの持っている夢とか、小さな種みたいなものをバカにせずに盛り上げてあげるというのが大事だと思うんです。

民間人校長の今後は未定?!

――山口さんは毎朝、校門で子ども達を出迎えているそうですね。やはり、一人ひとりの顔を見て、という感じですか。

山口 そうです。うちの学校は人数が少ないので、何日か顔を見せへんかった子がいたら「どうやった? 元気やった?」と声をかけます。元気のないあいさつの子がいたら、「もっかい言って。聞こえへんわ」とか言いながら。

――ちょっと気になる子も、たまにはいるんですか。

山口 日々います。それはどこの小学校も抱えていることだと思います。あの子が来てないなとか、あの子は朝ケンカしてきたのかな、とか。

――山口さんは色々な企業で働いてきて、今は校長先生。キャリアの悩みはあるんですか。

山口 大阪市の公募による民間人校長の任期は3年。2016年3月で任期が切れるので、その後、自分が何をしているのか、全く分からないことですね。もちろん、続けたい思いはあります。私は時代の変化に強いというか、適応力はあるほうなんです。学生時代に実家から仕送りが止まって、そのときに30種類くらいのアルバイトをしてなんとか生き延びた経験があるので、基本的に何でもやれると思ってますが。