大変でも「今」を大切に子育てしてほしい

――1つめのトークテーマは「子育ての悩み&楽しみ」です。お二人とも、とても活躍されているので、小さいお子さんを育てているようには見えないんですが、もちろん悩みとか楽しみがあると思います。今井さんの場合はどうですか。

今井 息子が小さいときは「ママが大好き!」って感じだったんですけど、今は手もつながなくて、キスもしてくれなくなっちゃって。寂しいです(笑)。もう5年生なので、「子育てが大変」っていう時期は過ぎたような感じです。今は自分でやることを決めたり、進め方を自分で考えたりできるようになったので、そのへんは安心していますね。

――子どもが小さいうちは大変ですけど、振り返ってみるとあっという間ですかね。

今井 そうですね。本当に大変な時期はそんなに長くないのかもしれません。だから小さいお子さんのいる方には今、精いっぱい子育てをしてほしいなぁと思います。ほんとに、子どもっていうのはすぐ離れていってしまうので、大変でもその「今」を大切にしてほしいなぁと思います。

言葉だけでは分からない、子どもの気持ちをくみ取ってあげたい

――今、最大の子育ての悩みは何ですか。

今井 息子は自分でできることは増えてきましたが、社会ではまだ手話を知っている人が少ないので、彼が社会に出たときにどう対応していっていいかを教えるのがちょっと大変なのかなと思います。障がいに関しては、ちょっと変な言い方かもしれませんが、言語の異なる外国人と一緒に過ごしている感じなんですよ。私達は手話で話をするんですけど、どこまで彼の気持ちをくみ取ってあげてるんだろうという悩みが最近はありますね。本当に分かってあげられてるのかな、彼の言いたいこと、伝えたいことをくみ取ってあげているのかな、と。

――小学校5年生というと、徐々に思春期という時期ですよね?

山口 だんだん賢くなってきて、生意気になってきて、「好き」がうまく言えなくって。特に男の子は素直になれない、ちょっと意地っ張りなところが出てくるのが5年生です。

――確かに、発している言葉と本当の気持ちがどうなのかは繊細に見ていきたいなと、親としては思います。

今井 言葉以外の、行動だとか、そういうところから子どもの本音をキャッチする力が、母には欲しいですよね。

パートナーと協力し合い、いざとなったら社会の力も借りる

――山口さんは校長先生ですから、さぞかし子育てが上手に違いないと思いますが、悩みなんてありますか。

山口 山のようにあります。例えばPTAの会議で「『早寝、早起き、朝ごはん』をお願いします」、などと言いながら、自分の家では夜11時くらいに子どもがバタバタしてることもあって。最近は、私が帰宅する靴の音を聞いて、子ども達が寝室に駆け込む気配がする(笑)。

――普段は旦那様がお子さんの世話をされているんですよね。

山口 うちは結婚したときから私が大黒柱兼世帯主。夫に育児と家事を任せています。こういう形が増えるのもいいんじゃないでしょうか。いわゆる「母性神話」と「大黒柱プレッシャー」から解放されて、夫も妻も家事の力と稼ぐ力を持っていて、大変なときはお互いに役目をバトンタッチしながら家庭を保っていく。いざとなったら、社会にも助けてもらう。社会が子育てに寛容であってほしいと常々思います。

――私は地域の高齢者の方に一日2時間ずつ、子どもの見守りなどをしてもらっています。でも、こんな母親でいいのかという罪悪感を覚えることもあります。山口さんはそういうことはありませんか。

山口 感じないといえば嘘になりますね。たとえば、ベテランの校長先生達から

「やっぱりお母さんがしっかりせなあかん」とか「家庭の力が弱くなった」などという声が出る。でも今は、やはりみんなで子育てをやっていかなあかん時期に来てるよ、ということを私は思っています。