それと同時にあるダメージとしては、やっぱり人に会うことによる緊張……これもありますよね。ふだん人に会わないものだから、たまに大勢の人と同席して長時間話をすると、無意識のうちに気が張っているんだろうな、その後の数日間は、やっぱり動けないようなあんばいになるものな。何とも言えない重さで、身体の芯までずうっとぐったりしてしまう。

選び抜かれた時間の中で愉しみたいのです

 若いころは、違った。「失敗したなー」とか思っても、心身の回復は比べものにならないくらい、早かった。「やらかしたなー」とか思っても、連続して飲みに出かけてゆく気力もあった。

 けれど、今はもう違うのだ。子どもが生まれて時間の価値が一変したように、お酒の価値も変化したのだと思う。わたしにとってお酒はもう、何かのついでに気持ちをあげていくためのものではなくて、選び抜かれた時間のなかで(限られた時間、ともいう)、自覚的に愉しむもの。そんなふうに変化したんだと思う、ほんとに……。

 ひとりで、あるいは気の置けない人たちと美味しいお酒を飲んで、翌日、二日酔いがあってもなくても、心が澄み渡っているかどうか。これが大事ですよね。昨晩のさまざまが滋養として心身に残っているような。これがほんとに贅沢なお酒のような気がする。ダメージを連れてくるお酒はもう、心も体も無理なのだ。

 一回一回を大切に思う、そんなお酒を飲みたいものですね……(遠い目)。もう人生、本気で折り返しだもん。なんて言いつつ、とっておきのお気に入りのサラミをにやにやしながらつまみ、ひとりでフレシネを味わう贅沢な夜のわたしなのだった。


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