1.「思い込み」「バイアス」について知りましょう

 人間はバイアスにかかりやすく、また自身がかかったことに気づかないこともあります。交渉ではバイアスをいかに取り除くかが非常に重要です。自分が持っている「常識」や「前提」は本当に正しいのか? 常に自問してみましょう。

 2.入念に状況把握しましょう

 バイアスを取り除くためにも状況把握は重要です。また効果的に状況把握をするには、相手に対し上手に質問をしなくてはいけません。具体的に「上手な質問」とは、どんな質問でしょうか。

 ①相手の利益は何か? を最優先に考える。

 まず、あれ?と思ったら、正直にテストの件は前に話しましたか? と聞いてみましょう。そしてテストの目的、テスト結果から得たいもの、テストをどうやって使うか? などを聞きましょう。運営委員が最終的に欲しいものはプロジェクトの成功で、テストはその手段です。テストの位置付けを聞く中で、別の手段が見つかるかもしれません。その場合Aさんは、運営委員の利益獲得に貢献しながら自分が無駄な仕事をしないような提案をすることができるのです。

 ②相手に共感、好意を表す。

 人は自分の味方には協力したくなります。自身が貢献したいこと、自分は相手の味方であることをまず伝えましょう。味方として協力を仰ぐことでAさんが残業しないで済む方法(テストをするかどうかも含めて)を運営委員が一緒に考えてくれる可能性が高まります。

 ③具体的に提示しながら聞く。

 「いつまでですか?」と質問すると、相手は自身の希望日を答えますよね。一度出された具体的な日程を大幅に変えるのは、さすがの交渉専門家でもなかなか困難です。

 このケースでは、運営委員の希望日が「重し」(交渉用語で「アンカリング」といいます)になって、その後にAさんが抵抗を試みるも運営委員が望む日程に近い日が締切日になりました。しかも、最終的には運営委員がAさんのために譲歩した、という構図になってしまいました。日程の要望は自分の望む日を自分から具体的に示しましょう。例えば先にAさんが「1週間ならできます」と具体的に(かつポジティブに!)言えば、締切日はもっと遅くなっていた可能性があります。