性格・コンセプトの違う2機種だが、掃除性能は互角?

 短時間ながら、ルンバ980とダイソン 360 Eyeの比較テストを行うことができた。その結果を参考までに紹介しよう。

 まず設定についてはルンバ980の辛勝だ。どちらもスケジュール設定などの機能を活用するためには自宅のWi-Fiへの登録が必要になるため、スマホからWi-Fi設定をロボット掃除機のほうに転送する操作を行う。最初に掃除機のWi-Fiにつながなくてはならないが、ダイソンのほうは取扱説明書に記載されているパスワードを入力する必要があり、若干まごついた。ルンバはボタンを長押しするだけで設定を進められるので、その点はルンバのほうが親切だった。

写真はダイソン 360 Eyeの設定画面
写真はダイソン 360 Eyeの設定画面

 掃除性能については、まさに一長一短があるという印象だった。吸引力については、ルンバ980も11年10月発売の「ルンバ700シリーズ」に比べて約10倍にアップしたとのことで、十分な性能を持っているようにも思える。しかしダイソンはそれを凌駕する吸引力を実現しているのも事実だ。実際、じゅうたんの上にまいた小麦粉をルンバは多く残してしまっているのに対し、ダイソンはかなり吸い取っていた。

 一方で、ルンバには動きの柔軟性の良さを感じた。テーブルの脚や椅子など様々な障害物にぶつかったときに、ルンバは何度も角度を変えてその周りをしっかりと掃除しようとする。ダイソンのほうは若干「諦めが早い」という印象を受けた。壁際なども含めて、ルンバはサイドブラシをうまく使ってゴミを中央部に寄せ、しっかりと吸引していた。ダイソンは吸引口が本体幅いっぱいまで広がっているものの、紙製のネコ砂を余すところなく吸引するまでは至らなかった。

ダイソン 360 Eyeの掃除前と掃除結果。粉は取れていない部分もあるが、おおむね掃除できたという印象だ
ダイソン 360 Eyeの掃除前と掃除結果。粉は取れていない部分もあるが、おおむね掃除できたという印象だ

ルンバ980の掃除前と掃除結果。ダイソンに比べて粉が取り切れていないのは一目瞭然。このテストはちょっとルンバに厳しい内容だったかもしれないが、ネコ砂についてはほぼ取り切れているように感じた
ルンバ980の掃除前と掃除結果。ダイソンに比べて粉が取り切れていないのは一目瞭然。このテストはちょっとルンバに厳しい内容だったかもしれないが、ネコ砂についてはほぼ取り切れているように感じた

 ダイソンが発表会でネガティブキャンペーンを行ったように、サイドブラシがホコリをまき散らしてしまう可能性は確かに否めない。しかしサイドブラシが確実にゴミを捉えて引き寄せるという効果もテストでは実感できた。「空気清浄機を置いてキャッチするからサイドブラシがあってもいい」と考えるのか、「空気清浄機を置いたとしてもサイドブラシはイヤ」と考えるのか、そのあたりで選ぶのもよさそうだ。

 使い勝手については、ルンバの勝利だった。ルンバ980は「デュアルバーチャルウォール」が2個付いており、掃除してほしくない場所を2カ所設定できる。ダイソンはそういった機能を全く備えていないので、ペットを飼っている家でダイソンを使うのはちょっと難しい。というか、使う場合はペットのえさ・水やり場をどうするか、それぞれの家で工夫を凝らす必要がありそうだ。

 アプリについては互角だった。どちらも遠隔操作が可能で、スケジューリングや履歴の確認もできる。ルンバの場合は念入りに掃除する設定(全フロアを2回ずつ掃除する設定)も可能になっており、ちょっとした気配りを感じた。一方でダイソンは先ほども紹介したように掃除履歴を地図で確認できる点がうれしい。互角というよりは、ダイソンの辛勝といったところかもしれない。

 大きさや動作音については、色々な考え方があるだろう。今回のテストでは、ダイソンの全高(約12cm)が問題になるような場所がなかったため、「本体の高さが10cm以下(ルンバ980の高さは約9.2cm)でないと家具やベッドなどの下に入り込みにくい」というルンバ陣営の主張を確認することはできなかった。しかし一方でルンバの幅・奥行きが約35.3cmなのに対し、ダイソン 360 Eyeは幅23×奥行き24cmと、一回りどころか二回りほどコンパクトに仕上がっている。ルンバより狭い所に入りやすいというのも確かだ。

 動作音については、確かにダイソンのほうが大きい。14年9月に発表した際にはもっと大きな音だったが、日本の家庭で発売前のモニターテストを実施して「音がうるさい」というフィードバックをもらったことで、風路設計を見直して低騒音化を実現したとのことだった。それでもそこそこうるさいのは確かだが、ルンバ980も決して静かではない。ある程度の吸引力を実現するためには、騒音は仕方のないところだろう。

 このあたりはそれぞれの製品作りの哲学の違いでもあるので、一概にどちらがいい、悪いとは言いにくい。自分の家で使った場合にはどうなのか、そういう見方で選ぶほうがよさそうだ。

 ルンバは2002年の発売から既に13年の歴史があり、ユーザーの声を聞いて年々進化を遂げてきた。その結果が、こういった細かい気配りにつながっているのだろう。一方のダイソンは10年以上前からロボット掃除機の開発をしていたものの、初代機が登場したのはつい最近だ。それでも、ある意味でルンバに負けないモデルに仕上げているのはダイソンの底力なのかもしれない。

 製品全体の完成度としては、やはりルンバのほうがリードしているようには思えるが、どちらを選んでも後悔しないのではないかと感じられた。

前編「ルンバ対ダイソン 新型ルンバの新しい掃除法とは?」

(文・写真/IT・家電ジャーナリスト 安蔵靖志)