先日、ルンバとダイソン両者が、ロボット掃除機を発表した。ダイソンは満を持して投入した初めてのロボット掃除機、一方のルンバは掃除方法を一新した最上位モデル。両者の違いはどんな点にあるのか、そして機能はどちらが優れているのか。ルンバの最新機種を紹介した前編(「ルンバ対ダイソン 新型ルンバの新しい掃除法とは?」)に続いて、後編ではダイソンのロボット掃除機「ダイソン 360 Eye」について、IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志さんが解説。さらに両モデルを実際にテストした結果も紹介します。

前編「ルンバ対ダイソン 新型ルンバの新しい掃除法とは?」

ダイソンが2015年10月23日に発売した「ダイソン 360 Eye」
ダイソンが2015年10月23日に発売した「ダイソン 360 Eye」

 ダイソン 360 Eyeは、進化して登場した「ルンバ980」と似たような特徴を備えている。大きな類似点はカメラを利用した「SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)」を採用している点にある。SLAMとは「ローカリゼーション(自己位置把握)」と「マッピング(環境地図作成)」を同時に行う技術のこと。ルンバ980もダイソン 360 Eyeも、カメラによって捉えた部屋の中の特徴点(扉や部屋の角、エアコンなどの特徴的な部分)を記憶して部屋のマップを作り、自分の位置がどこなのか、掃除した場所はどこで掃除が済んでいない場所はどこかを把握しながら効率的に掃除を進めていく。

2014年9月に開催されたダイソン 360 Eyeの発表会の模様。創業者であるジェームズ・ダイソン氏の背後のスクリーンには、カメラで部屋の特徴点を捉えるダイソン独自の「360°ビジョンシステム」のイメージが映し出されている
2014年9月に開催されたダイソン 360 Eyeの発表会の模様。創業者であるジェームズ・ダイソン氏の背後のスクリーンには、カメラで部屋の特徴点を捉えるダイソン独自の「360°ビジョンシステム」のイメージが映し出されている

サイクロン機構を搭載 他機種の4倍以上の吸引力?

 ホールケーキのような円柱状の形状を採用し、縦横無尽に動き回りながら本体下部の吸引口からゴミやホコリを吸引するというダイソン 360 Eyeのスタイルは、ルンバ980と共通している。しかし、それ以外の部分を見ると、かなり差異化が図られていることが分かる。

 まず大きな違いは「吸引システム」だ。

 ダイソン 360 Eyeはロボット掃除機として初めて本格的なサイクロン機構を搭載している。開発を担当したシニアロボティクスエンジニアのマイク・オルドレッド氏は「他のロボット掃除機の4倍以上の吸引力を実現している」と自信を見せる。「他のロボット掃除機」というのはどの機種かは明言していないが、ルンバシリーズであることは間違いない。

ダイソン 360 Eyeに搭載している「ラジアルルートサイクロン機構」。8つの小型サイクロンによって、吸引した空気からゴミやホコリをより分ける
ダイソン 360 Eyeに搭載している「ラジアルルートサイクロン機構」。8つの小型サイクロンによって、吸引した空気からゴミやホコリをより分ける

 ダイソン 360 Eyeには独自開発の「ダイソン デジタルモーター(DDM) V2」が搭載されている。これはダイソンの現行スティック型コードレス掃除機が搭載する「DDM V6」より1世代前のモーターだが、2012年9月発売の「Dyson Digital Slim DC45」をはじめとするスティック型コードレス掃除機の多くに採用された実績を持つパワフルなモーターだ。モーター自体は毎分最大約11万2000回転の運転が可能だが、ダイソン 360 Eyeでは若干抑えて毎分最大約7万8000回転で運転するという。

ダイソン 360 Eyeに搭載している「ダイソン デジタルモーター(DDM) V2」
ダイソン 360 Eyeに搭載している「ダイソン デジタルモーター(DDM) V2」