幼稚園受験の面接で、全く初めての質問をされてギクリ

 「たーちゃんね、しぇぶんがしゅ(好)き」

 「へえ~、ウルトラセブンが好きなんだ。じゃ、ウルトラマンは?」

 「しゅき」

 「エースは?」

 「しゅき」

 「タロウは?」

 「しゅき」

 「じゃ、一番好きなウルトラ兄弟は?」

 「んとねー、レッドキング!」

 なんて会話で受験前日の夜、父親の膝を砕いた3歳児が、いざ面接となると、見たこともないほど完璧な答えをかまそうとは!(妻注釈:ちなみに、レッドキングは怪獣。ウルトラ兄弟ではありません)

 「今日のお天気はなんですか?」と面接の先生が聞いてきたとき、わたしはギクリとした。そんな質問は、模擬面接の際も、それから親子で練習した際もされたことがなかった虎だからである。

 マジンガーZとかデビルマンとか、そうそう最近お気に入りのガイコッツ(アニメ『ヤッターマン』の悪役たちである)とか、まるでとんちんかんなことを口走られてしまったらどうしよう。なにしろ、好きなウルトラ兄弟を聞かれてレッドキングと答えるような息子である。油断はできない。

 だが、虎はさらりと正解を口にした。

 「あめ」

 「じゃ、雨の日に持つものはなんですか?」

 聞いた瞬間、わたしは今度こそ頭を抱えたくなった。理由は先に同じ。なにしろ、前日の予行演習では「お母さんの作った料理で好きなものは?」という問いに、間髪入れずに「ふりかけ!」と答えてヨメの心を粉砕した息子なのである。

 しかし、ところが、にもかかわらず、虎は事も無げに答えた。

 「んとねー、かさ」

 一事が万事、この調子だった。面接での虎は、わたしの知っている虎ではなくなっていた。試験前日までの虎がただの人間モロボシダンだったとしたら、当日の虎はウルトラセブンだった。

 他の子どもたちと一緒に過ごす行動観察の際も、虎は変身したままだった。変身してからはとうに3分以上経過していたが、いつもの虎に戻る気配はなかった。

 おもちゃで遊ぶ。他の子がやってくる。「貸して」と言われる前に「どうぞ」と貸してあげる。同い年の子どもだけでなく、その両親にも積極的に話しかけ、「あのね、これハンバーガーなの」とか言いながらそれらしきおもちゃを渡している。

 誰だ、お前!?