「浪速区で、敷津校区だけ『子育てサロン』がないねん。なんとかならんやろか」
着任して早々、地域の方に相談された。私も、上の子を抱えて地域の子育てサロンに参加したことがある。公立保育園が会場だった。敷津小校区には、幼稚園も保育園もない。そうなると、完全に一から立ち上げる必要がある。着任早々の私には、荷の重い課題であり、また「それは小学校校長の仕事なのか?」という疑問もあった。
着任して1年経ったころ、この地域が「孤立育児」のリスクをはらんでいることに危機感を持った。難波に近いため、仕事はある。交通の便もいい。地元に長く住む人と、地域や外国から移り住んでくる人の断絶がある。小学校が、唯一の地域社会との接点になっている家庭もある。参観で来る、学校行事で来る、学校が会場の子ども会行事に参加する。保護者同士が顔見知りになり、子育ての輪が広がっていく。特に、校内学童のお迎えのときに、談笑する保護者同士の姿が見られる。公立小学校は、子育て仲間とつながる場でもあるのだ。
小学生より小さな子どもを育てている人は、どうしてるんだろう。乳幼児の子育ては、目が離せず気が抜けない。虐待のリスクが高い時期でもある。同じ地域で、子育てをする親がつながる場があったほうがいい。そして、地域の人とつながる場が。
着任2年目の終わりごろ、学校運営に支障の無い範囲から動き始めた。民生委員の方の意見を聞いたり、社会福祉協議会の担当者の助けを借りたりしつつ、具体的なプランを立てた。
地域と子育て課題を共有し、一緒に動く
最初は、地域から反対の声が多かった。高齢者向けの食事サービスや子ども会活動など、たくさんの行事を抱える地域ボランティアに余裕はない。外部からボランティアやNPO団体に来てもらい、運営してもらうことも考えていくつか当たった。でも、理想は「地域に知ってるおじちゃん、おばちゃんがいる」関係だ。
一回目は、校区にある浪速区図書館から館長さんが読み聞かせに来てくれた。子どもの笑顔を共有する、ほのぼのとした時間。長く、焦らず続けていきたいとみんなで話している
しかし、悩みは取り越し苦労だった。地域で募集をかけてもらったら、なんと20名以上も集まった。女性を中心にした、「敷津子育てボランティア」があっという間に結成された。運営リーダーに当たる方も、「自分達で作るサロンにしたい」と前向きだった。
次ページから読める内容
- 即効性はないかもしれないけれど、大切なのは積み重ね
- 「親子を見守る目」が増えれば大成功
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