「保育料を引き上げるなら高所得者」が3割

 「なんらかの保育料引上げを近く予定・検討しているか」という質問には39.5%の自治体が「引き上げの予定はなく、当面、必要はない」と答える一方、7.4%の自治体が「来春の引き上げ実施を予定」もしくは「来春の実施を目指し検討している」と回答しました。ほか24.7%の自治体が「引き上げに向け検討中」もしくは「時期は未定だがいずれ検討が必要になる」と答えています。引き上げを検討している自治体に、対象となる世帯を聞いたところ、42.3%が「所得に関係なく幅広い世帯」を対象にすると答えた一方、30.7%の自治体が「高所得者」もしくは「高所得者の中でも特に収入の多い世帯」と回答しています。

 保育園事情に詳しい株式会社ここるく(東京・目黒)の山下真実さんは「どの収入層の保育料を引き上げるかは自治体の方針によっても変わってくると思うが、0歳児一人につき月20万円以上の運営費が行政から施設に支払われており、保護者が負担する保育料の何倍ものコストが実際には掛かっている。金額を上げるとなると反発も多く出るが、こういった事実ももっと分かりやすく説明すれば理解が得られやすくなるのでは」と指摘しています。

保育所整備では「用地、保育士の不足」が課題

 保育所整備にあたる課題も浮き彫りになりました。

 「用地・物件の確保」が課題と答えた自治体は82.7%、「保育士の確保」が課題と答えた自治体は72.8%にのぼっています。最も大きな課題では「用地・物件の確保」を挙げた自治体が43.2%とトップでした。

 用地不足対策では国家戦略特区による規制緩和を活用し、都市公園内に保育所を設置する計画が立ち上がるなど、国や自治体も喫緊の課題と捉えています。DUALでも「物件の確保」「周辺住民の理解」などの課題について、これまで記事で取り上げています。(「保育園は迷惑施設」の言葉に落ち込むだけでいい?など)。前述の山下真実さんも「保育士の不足や用地の確保は、自治体だけでなく国としても対処すべき課題」と指摘しています。