子育てから仕事から夫婦関係から社会問題まで、働く母とはなんと多くの顔を持って生きていることだろう。最愛の息子を育てながら小説家として活躍する川上未映子さんが、素敵も嘆きもぜんぶ詰め込んだ日々を全16回にわたりDUAL読者にお届けします。第2回のテーマはずばり、「女性の加齢」について。今夜はいつにも増してグラスが空くペースが速そうですよ。

 なぜ女性は、ただ人間として自然に加齢してゆくことさえも許されない存在なのかと、今日もフレシネを飲んで考えた。

 ある日のこと。わたしは新刊のインタビューを受けるべく都内のスタジオにいた。テレビ番組だったので、メイクさんに仕上げてもらって指定された座席へ。インタビュアーとしてやってきたのは、思わず「生まれたばっかりでは」と言ってしまいそうなほど、とっても若い女性タレント。髪もつやつやのふっさふさ。可愛くって、黒目が濡れて、きらきらしている。シミひとつない陶器のような肌。きけば、19歳。若いなー。自分にもこんな年齢だったときがあったなんて信じられないなー、なんて思いながら、新刊についての話をした。

「若い子と並ぶとさすがに」

 取材も無事に済み、数人の編集者や営業担当者たちとランチへ。この数年、どれだけ文芸書が売れないか、みたいな、最近ではごく当たり前になった話題で盛りあがるはずもなく、そうは言ってもやるしかないので精一杯がんばりましょうという、これまたいつもの感じで話は落ち着き、みんなで食後のお茶を飲みながら、話はさっきの収録のあれこれへ。すると、わりに気さくに話をする間柄の男性編集者が、わたしの顔をみて、すごく明るい感じでにこにこと笑いながら、こう言ったのである。

 「いやー、川上さん。やっぱり若い子と並ぶとさすがにキツいですねー!」