差額ベッド代は高額療養費の対象外

 次に、医療費はどれくらいかかるかを見てみましょう。全日本病院協会によると、急性心筋梗塞など医療費が200万円近くになる病気もあります(グラフD)。しかし患者が窓口で払うのは医療費の3割。加えて、公的医療保険には高額療養費という仕組みがあります。収入に応じて1カ月当たりの自己負担限度額が定められ、上回った分は申請すれば還付されます。医療費が高額でもすべて1カ月に収まった場合、平均的な収入なら、実際の自己負担は8万~9万円ですみます。

 ただし、月をまたげば自己負担額は増えるし、高額療養費の対象外である差額ベッド代がかかると費用は膨らみます。

 さて、ここで気になるのがその差額ベッド代。差額ベッド代は医療費ではないので、高額療養費の対象外。つまり青天井でかかってきます。ちなみに厚労省によると、差額ベッド代の平均(11年)は1人部屋で1日約7500円、4人部屋で同2300円でした。

 しかし、そもそも差額ベッドはどれくらいの人が使っているのでしょう。永田教授が患者調査を基に利用率を簡易推計したところ、全体での利用率は約4.9%。がんは9.6%、心筋梗塞などは9.3%、脳卒中は3%でした(グラフE)。つまり、実際に使っている人はそれほど多いわけではないのです。

 厚労省は、差額ベッド代請求の条件として「患者の自由な選択と同意」が必要であることを、病院などに向けた通知で示しています。(1)患者の同意を書面で確認していない、(2)救急患者など「治療上の必要」で個室などに入院させる、(3)患者の選択でなく病棟の管理上の都合で個室などに入院させる--という3つのケースについては、差額ベッド代を請求できないとしています。差額ベッド代を請求されたときは、この3つの条件をよくチェックしましょう。