継続していくために収益性をどう保つか

DUAL 「家族を支える社会」を求める発想が生まれるきっかけは?

新居 中学・高校の6年間を通じて、「自分に自信を持てない」という子が周りに多かったんです。私自身も過度なダイエットで心身のバランスを崩したこともありました。

 なんで自信を持てないんだろう?って尽きつめていくと、やはり家庭でしっかりと自己肯定感を育めることが大事なのだと知りました。大学のAO入試でも「子どもの自己肯定感を育てる社会をつくりたい」という問題意識を発表して、今でも私のテーマとして考え続けています。manmaの活動を始めた根幹には「誰もが自分に自信を持てる社会をつくりたい」という思いがあるんです。

DUAL これからはどんな発展を計画しているんですか?

新居 まずは、家族留学の中身をより充実させるためのプログラム設計が第一の課題です。そして、継続していくためには収益性をどう保つかという課題もあります。今は学生も協力家庭も完全なボランティアとして参加していますが、10年続けていくには持続可能なモデルを考えないといけないなとも感じています。でも、10年後には私たちの活動が必要でなくなっている社会になっているほうが理想ですけどね。

DUAL 今の女子大生ならではの世代観についても教えてください。社会に出る前の若い世代に対しては、オトナたちから様々な形容がなされます。新居さんの世代はデジタルネイティブ世代とも言われますね。コミュニケーションの方法で、上の世代との違いを感じることはありますか?

新居 10歳上のワーキングマザーの家庭に伺った時に、「私たちとツイッターの使い方が違うかも」と感じたことはあります。30代以上の方々はツイッターを“情報発信”のツールとして使っていらっしゃるようなのですが、私たちはどちらかというと“連絡”のツール。「今日の待ち合わせ場所」とか友達同士や彼氏とのコミュニケーションに使うんです。

DUAL 待ち合わせ場所をツイッターで全世界に公開する一方で、お互いの家族構成については深く突っ込まない。斬新に感じます!

新居 たしかに不思議かもしれませんね(笑)。

DUAL 「専業主婦志向が高まっている」というのは本当なのでしょうか?

新居 それは少し違うと思います。「ずっと働き続けたいですか?専業主婦がいいですか?」という問いに対して「専業主婦」を選択する女子大生はたしかにいると思います。でも、その理由をよくよく聞くと「結婚して子育てする時に、子どもの成長を見守りたいから」という理由が多いんです。つまり、その部分さえクリアされれば働いていいと思っているということ。「専業主婦になりたい=働きたくない」ではないんです。私たちの世代に対して、他にはどんなことが言われているんですか? ぜひ知りたいです。

DUAL 「夢を描けない若者が増えている」というのは本当なのでしょうか?

新居 物心ついた時からずっと不況でバブルの余韻さえ知らないので「国や企業が右肩上がりで成長する」という将来像はまったく描けないですね。だからといって希望を持てないというわけではなくて、現実的にできることを探す人が多いのではないでしょうか。大手企業や公務員を目指す安定志向が強いのは確かだと思います。

DUAL 「若者は世界に挑む気概が足りない」と“グローバル離れ”を指摘する声については?

新居 うーん。むしろ逆かなと思います。短期も含めてどこかに留学経験をするのは当たり前ですし、夏休みの時期にはフェイスブック上で毎日のように誰かが留学に出発する投稿が上がります。manmaメンバーの尾郷彩葉(慶應義塾大学2年)は「海外体験で感じたことを、帰国後に国内で活かすことをより深く考えているのでは」と言っていました。英語は日常生活レベルで話せる子が珍しくありません。

DUAL なるほど。グローバル体験が当たり前になっているということですね。反対にUターンやIターンなど「地元・地方回帰」の価値観も目立つと言われています。

新居 地方出身の女子大生は「このまま東京で就職するべきか、地元に戻るべきか」と真剣に悩んでいますよ。manmaメンバーの佐川奈央(慶應義塾大学2年)はこの問題意識をテーマにしていて、長野県伊那市で地方での家族留学を体験できるプログラムを計画中です。

DUAL 女子大生の素直な視点から生まれる活動は、新たな社会課題を解決するルートにつながっていくはずですね。ご活動の行き先をこれからも注目していきます。今日はありがとうございました。

(取材・文/宮本恵理子 写真/鈴木愛子)