今の社会は「家族をないがしろにしている」

DUAL 新居さん自身の価値観にも変化が生まれているのですね。

新居 変化はすごくあると思います。私自身は双子の姉として生まれて、母は私たちが学校に上がったくらいから声楽科卒のキャリアを活かして学校に教えに行ったり、自宅で教室を開いたりしていました。ただ、結婚や出産についてはポジティブなイメージを描けていたわけではありませんでした。周りの友達の家庭も別居や離婚している家庭もあり、世間から聞こえてくる情報も「DV」「嫁姑バトル」とかネガティブなものばかりで、「結婚っていいものだな」と感じられることがあまりなくて。結婚はあくまで夢で、現実としてとらえられていなかったと思います。

 それがmanmaの活動で自分の将来としてとらえられるようになったのはとても大きいですね。5人の子どもを子育て中の女性が「すべて自分でやることはできないので、母親の私しかできないコミュニケーションだけをしっかりやって、アウトソースできる部分は積極的に助けを借りている」と教えてくださって、「頑張り過ぎないでいいんだ」と気づけたことも収穫でした。

DUAL 20年前、30年前の女性が働くことが一般的でなかった時代には、「生きるために結婚する」という選択をしていた女性も多かったはずですが、女性に経済力が備わった今では「結婚しなくても生きていける」という選択も簡単にできる。女性が男性と同じように就職して活躍することが期待される時代になったからこそ、これから社会に出る若い世代の女性に「家庭の築き方」についての不安が広がっているのでしょうね。

新居 そうですね。結婚しなくても女性が生きていける時代だからこそ、家族についての体験談を聞きたいですね。私がすごく感じるのは、今の社会が「家族をないがしろにしている」という問題です。実際にはいろいろな扶助制度はあるのだと思いますが、全体の印象として「社会が家族をしっかり支えます」というメッセージがほとんど聞こえてきません。

社会を構成するのは一人ひとりで、その一人ひとりを支えている基盤が家族。家族が大切にされる社会でなければ、前向きに生きられる人が減って、国力だって落ちていくのではないでしょうか。