知識力の開成、論理力の海城

 実際の入試での社会の問題について、馬屋原先生に教えていただきました。

 「一般的に、社会の入試は、地理2:歴史2:公民1の割合で出題されます。地理や歴史に限らず、その年の時事に絡んだ出題がなされることも多いので、ニュースをチェックしておく必要もあります。2016年度入試ならば、伊勢志摩サミットに絡めた三重周辺の地理や、沖縄の基地移設問題に絡めた沖縄周辺の地理を復習してから臨んだほうがよいかもしれません」

 「社会は地理・歴史・公民の3分野に分かれていますが、ざっくり言えば『世の中を知る教科』だといえます。『歴史は好きなんだけど、地理は苦手なんだよね』などと分野を分けて考えずに、例えば“地理を横の線”“歴史を縦の線”というようなイメージで、立体的にイメージして学習すると、得意・不得意という意識も薄れるでしょう。実際、難関校の中には、地理・歴史・公民と分けずに、総合的な問題を出題する学校もあります」

 では、中学受験の社会入試で最も難しい問題を出す学校はどこなのでしょうか?

 「一口に『社会』と言っても、学校によって難しさの質は大きく異なります。知識の『量』が求められるのは、女子学院や頌栄女子学院です。中学入試には珍しく、配点が算国と同じであり、問題数が非常に多く、細かい知識も求められます。開成の社会も知識の『量』で勝負が決まりますが、近年、マニアックな問題は少なくなってきています。その代わり合格者平均点は非常に高くなっています」

 「一方で麻布と海城の社会は記述問題がメーンです。この2校では、単に知識を問うだけの問題はほとんど出題されません。文章や資料から問いに答えるのに必要な情報を読み取り、それを論理的に説明する力を求めてきます。麻布の社会に対応するには、ある程度、大人の世界の常識に通じておく必要がありますし、海城の社会は社会のテストというよりも読解問題に近く、どちらに対しても特別な対策が必要になります。単純に偏差値で比べれば海城よりも開成のほうが上ですが、開成の社会ができても海城の社会ができない子はたくさんいます」

社会は親が教えられる教科。でも、今の入試傾向をよく知っておかないとダメ

 最後に、馬屋原先生はこうアドバイスしてくれました。

 「中学受験において、社会は親が教えてあげられるところが多い教科です。お子さんに何か聞かれたら、答えてあげることもできるでしょう。ただし、そのときについ『こんなことも知らないの?』と言ってしまう方がいらっしゃいますが、それはNGです」

 「暗記の教科と思われがちな社会ですが、最近の入試は、複合的な問題も多く、暗記だけでは太刀打ちできない問題もあります。『この学校にわが子を入れたい』と思うような学校があれば、まずはその学校の過去問題を親御さん自身が解いてみるべきです。『今の中学受験ではこういう問題が出るんだな』と知っておけば、おのずとお子さんにこういうことを教えてあげよう、こういう所に連れていってあげようと、発想が広がるはずです」

 「わが子を社会好きにするために鍵を握っているのは、親御さんの行動です。本格的な受験勉強が始まる前の低学年のうちに、お子さんをたくさんの“社会”に触れさせてあげられるといいですね」