気候は地理の基本のキ! 歴史はイメージを持たせることがポイント!

 大手塾での社会の授業の進め方について、馬屋原先生は下記のように解説します。

 「大手受験塾では、4年生から5年生の夏までに日本地理を、5年生の後期から約半年間に日本史を、5年生の2月(新6年生)から公民を学習していきます。4年生の地理では、テキストもビジュアルが多いため楽しく学べますが、5年生になると情報量が一気に増えて、文字情報ばかりになりがちで、学年が上がるにつれて、1回の授業でより多くの情報を頭にたたき込まなくてはならない状況になります」

 各分野の学習ポイントを馬屋原先生にアドバイスしていただきました。

【地理の学習のポイント】

 中学受験の地理で必ず出題されるのが、気候に関する問題です。多くの入試では雨温図(気候グラフ)が出題され、ここが理解できていないと、全く答えられなくなってしまう問題もあります。ですから、「気候は地理の基本のキ!」だと思っておいてください。雨温図の問題は、ただ正解を答えるのではなく、なぜそうなるのかまでを説明できる状態にしておくことが必要です。確信を持って解けるかがポイントとなります。

 例えば、お子さんに「新潟の辺りの気候の特徴って、分かる?」と聞いたとしましょう。「寒い!」と返ってきたときは要注意です。間違ってはいません。確かに寒いんです。

 ただ、雨温図の勉強を通じて理解しておきたいポイントの一つに、「新潟県は付近を暖流である対馬海流が流れているから、1月の平均気温が氷点下にはならない」というものがあります。新潟県の気候はと聞かれたときの模範解答は「雪が多い!」です。「冬の降水量が多い」と答えられたら花マルですね。

 こういう点をきちんと理解できていると、例えば、基本的な問題ですが、「新潟県では伝統工芸が盛んですが、それはなぜですか?」というような問題にも答えられます。「冬に雪が降り、農業ができないから」が、この答えです。

 中学受験をするなら、4年生のスタートの段階で47都道府県は覚えておいたほうがよいでしょう。低学年なら都道府県パズルや『あそんでまなべる日本地図パズル』などの無料アプリで、親子で遊びながら覚えることをおすすめします。

 社会は暗記科目と思われがちです。でも、単純な詰め込み学習では、知識をバラバラに覚えるだけで本当の意味で理解することまではできておらず、少し角度を変えた問題が出ただけで何が正解か分からなくなってしまうこともあります。各都道府県の情報は、自分の頭の中の引き出しにそれぞれ都道府県別に整理して入れておくようなイメージで、地形から気候、気候による特徴から農業、工業、文化までを総合的に理解しておくようにしましょう。

【歴史の学習のポイント】

 歴史に強くなるには、それぞれの時代についてのイメージ(先入観)を持つことが大事です。子どもは、普通、歴史についての色々なイメージを持っていません。そのため、それぞれの時代に一番活躍したのは誰かといった、キーワードの重要度についての理解が曖昧です。

 例えば、源頼朝と源義経は、ともに有名な人物ではありますが、歴史的に与えた影響の大きさという意味では、源頼朝のほうが圧倒的に重要です。

 歴史を初めて学ぶ小学生はこういった感覚を持っていません。そのため、テキストに出てきたすべての人物が重要人物に見えてしまい、「こんなにたくさん、一度に覚えきれるわけがない……」と絶望する子も少なくありません。これが、歴史嫌いの始まりです。

 そのため、「源頼朝」という名前を聞いたことがあるかないかだけでも、歴史を学ぶ際のスタートラインは違ってきます。低学年のうちから歴史マンガなどで、歴史に触れておくことをお勧めします。

 歴史に限ったことではありませんが、情報自体を頭に叩き込むこと、いわゆる単純暗記も社会の勉強の重要な側面です。ただし、暗記の仕方は、その子のタイプによって違ってきます。書いて覚えるのが得意な子もいれば、語呂合わせで覚えたほうが覚えやすいという子もいます。中には、テキストを読むだけで覚えてしまう子もいますが、それはまれなケースで誰にでもできることではありません。入試では、学校によって、人名などの漢字が難しくても「正しい漢字で答えなさい」と指示してくるところがあるので、書いて覚えるのが理想でしょう。難関校になると、『那覇市』といった常用漢字ではない漢字も書かせる学校があります。

【公民の学習のポイント】

 四谷大塚のカリキュラムでは、新6年生の2月から公民の学習が始まります。SAPIXでは4月後半、日能研では6月後半からのスタートです。

 公民の学習の中心は政治です。小学生に政治とは何かを分かりやすく説明するのは簡単なことではありませんが、政治とは「ルールを作ること」「ルールを運用すること」「ルール違反に対応すること」の3つだと教えています。これはそのまま「三権分立」の概念です。三権分立という言葉に象徴される「国の政治」と、それと対比する形で理解する「地方自治」、そして日本国憲法の三大原則に関わるところはしっかりと理解しておく必要があります。

 中学入試では時事問題を出題してくる学校も少なくありません。日ごろから政治や社会系のニュースに興味を持っておくことは重要ですが、本当に大切な「時事問題対策」は、その年の重大ニュースに関連した公民の基本事項についてしっかりと復習しておくことです。

 例えば、いくら「集団的自衛権」という言葉を覚えていても、9条の穴埋め問題に対応できないようでは不安です。

消費税についての議論があるのであれば、税の種類や直接税と間接税の違いなどについても理解しておきたいところです。公民に興味を持つきっかけとして、6年生になる前に皇居や国会議事堂などを訪れてみるのも良いかもしれません。

 では、実際の入試では、どのような問題が出題されるのでしょうか?