ワーキングマザーの家庭に伺い、一気に世界が開けた

新居 私が大学生になってからカタリバで高校生と話した時に「将来の夢は?」という話題になったんです。ある女の子が「ネイリストになりたいんです。自宅でマイペースにできる仕事の方が、子育てもできそうなので…」と答えました。とても言いにくそうに。私が「すごくいい夢だね!」と反応すると、その子はビックリした表情をして「こんな夢でもいいんですか? 親や周りの大人からは『結婚とか出産とか夢みたいなこと言っていないで、まずは社会人としてちゃんと稼いでいくことを考えなさい』と叱られていたんです」と話してくれました。

 manmaで実施したワークショップでも、キャリアプランについてはかなり明確に書けても、結婚・出産のプランとなると何も書けないという学生が少なくないんです。

 「私たちの世代が結婚・出産を現実の将来としてイメージできないのは何でだろう? どうしたら解決できるんだろう?」とmanmaのメンバーと考えながらも答えを見出せなかった時、ワークショップの協力企業に勤める女性が「うちに遊びに来る?」と誘ってくださったんです。双子を育てるワーキングマザーの方でした。ワーキングマザーの家庭に伺う経験をして初めて、「ああ、これが私たちが知りたかったことだ」と一気に世界が開けました

DUAL どんな発見があったのですか?

新居 キラキラ輝く姿だけじゃない、日々奮闘するワーキングマザーのリアルな姿が見えました。それまでワークショップを一緒に進めていただく企業の方としてカッコよく働く姿しか知らなくて、「双子がいるって言っていたけど本当かな?子育てしている姿が想像できないんだけど…」と内心思っていたんです(笑)。

 ご自宅に伺ったら、お子さんが制作した作品があちこちに飾ってあって「もっと素敵なインテリアにしたいんだけどね」とおっしゃりながらも嬉しそうに説明してくださって。双子がケンカしたら大きな声で叱ったりしている様子を見て、「こうやって仕事と子育ての両輪を回しているんだ」と初めて腑に落ちたんです。

 同時に「これなら、私にも何とかできるかもしれない」とポジティブな気持ちが生まれました。

 実は、もともと東京で育って近所の子どもたちと遊ぶ経験もほとんどしてこなかったので、子どもがすごく好きな方ではなかったんです。でも、実際に小さい子どもと接してみると「子どもってかわいいんだな」という感情も自然に生まれました。

 同じ経験をたくさんの女子大生ができる仕組みとして「家族留学」のプログラムを始めることにしたんです。(後編に続く)

(取材・文/宮本恵理子 写真/鈴木愛子)