育休退園にならないよう改善した自治体増える

普光院 首都圏では、千葉の我孫子市は決定率が100%です。我孫子市は毎年、待機児童がゼロですね。青梅市、春日部市なども入りやすい。

―― ポジティブな変化があった自治体はありますか?

普光院 所沢市の育休退園問題が報道された影響で、育休退園にならないよう改善した自治体がありました。八千代市、鎌倉市、静岡市、堺市などです。また、「育休中は条件をつけずに全員在園可」とする自治体の数も、13から17に増えました。

―― 新制度になったことで、保育サービスは受けやすくなったのでしょうか?

普光院 従来の認可外が小規模保育や認可保育所に移行しやすくなったことで、所得の低い人の保育料はかなり安くなり、行政の指導も入るので一定の質が担保されるようになりました。その意味で、新制度は一定の効果があったといえます。

 ただ一方で、園庭がないところが増えている状況は、気がかりです。最近は、利便性を重視して、ビルの中に何十人規模の施設を作るケースが多い。園庭がない分、近くの公園で代用すればよいのですが、それすらできない所もあるのです。都心の湾岸エリアなどでは、散歩に行っても公園は満員で、遊ぶことができず園に帰ってくる、なんてことも起こっています。ビル前の狭い空きスペースにビニールプールを置いて、子どもが水遊びしているすぐ目の前を、車がびゅんびゅん行き交っている、という施設もありました。子どもが走り回ったり、思い切り身体を動かせるような環境がない。これで日本の保育はいいのだろうか、と複雑な気持ちです。

―― 園庭がない施設のデメリットはほかにもありますか?

普光院 園庭がないと、保育士さんも大変なんです。ただでさえ人手不足なのに、何十人もの子どもをお散歩に連れて行く負担は大きい。また、体調の悪い子が1人でもいれば、園に残る子と外へ行く子に分かれて、それぞれに保育士さんがついて対応しなければなりません。元気いっぱいの幼児のエネルギーを室内で十分に発散させてあげることは、なかなか大変だと思います。

―― 園庭保有率が低い自治体はどのあたりですか?

普光院 園庭保有率は未回答の自治体も多いのでデータは限られますが、品川区、中央区、千代田区、港区、文京区は40%以下です。神奈川県では、藤沢市46.3%、大和市54.5%などが低いですね。新規の認可保育所を増やしている自治体は、ビルの中など限られたスペースに作らざるを得ず、どうしても園庭保有率が下がる傾向があります。数を増やしてくれていること自体は、喜ばしいことなのですが・・・。