参加者 洗濯が大変です。以前は週に数回だったのですが、夫から「男性は汗をかくし自分の服が臭くなると嫌だから毎日洗濯して」と言われてしまい、毎日洗濯しています。

カルッピネン 日本は高温多湿だからフィンランドより洗濯頻度が高いのかも。それより気になったのは「毎日洗濯してほしい」という旦那さんの話。「あら、そう。じゃあ、あなたが毎日洗濯して」と私は思いましたね。私は、今、夫が全部やってくれている。だからこそ、文句は言いませんよ。

パンツァー 今の日本は、1980年~90年代ごろのフィンランドと同じ状況のように感じます。そのころはフィンランドでも、男性の家事・育児への参加意識は、今ほど高くなかった。日本もこれから変わっていくのではないでしょうか。ある調査によれば、この20年でフィンランドの女性の家事時間は減り、男性の家事時間は増加しています。しかし、フィンランドでも、男女の家事時間が拮抗するまでにはまだ時間がかかると思います。

好きな家事、嫌いな家事について意見を出し合う参加者
好きな家事、嫌いな家事について意見を出し合う参加者

フィンランドでは、ショッピングは「低所得の若い女性の趣味」

参加者 洗濯物を畳んでしまうなど、後工程に嫌なものが多い。アイロンがけ、仕分け、畳みをするマシーンが開発されているらしいので、期待しているのですが。

パンツァー 興味深いことに、家電の登場により家事が減ったとはいえ、実際、”しなければいけない家事”が減ったかといえば、そうではないことが明らかになっています。清潔さや環境に関する観念も発展したせいで、より清潔な生活を求めるようになり、生活も多様化したのです。だから結局、家事は昔からあまり減っていないのかもしれません。

参加者 仮に掃除はルンバがやってくれるとしても、ルンバを使うために、まず部屋を片付ける必要があります。日本の住宅は狭いですし、片付けに苦労しています。

パンツァー 私は今回、日本を批判するようなことは決して言わないと決めてここへ来たのですが・・・、一つだけ言わせてください。日本はモノが多過ぎませんか。先日、京都の寺や神社を訪れたのですが、ガランとしていて余計なモノがなく、とてもきれいな印象でした。しかし東京に来たら、様々な種類の大量のモノが店に並んでいて、本当に驚いた。日本の方は、これらをどんどん買って、家にモノを増やしているのではないでしょうか。それなら掃除が大変になって当然です。私は、北欧人として、家にモノは少ないほうがいいと考えます。“片付けをしなくていい空間づくり”というのを北欧では大事にしているんです。

参加者 買い物が好きな人も多いはずです。私もつい色々買ってしまう。フィンランドの人はあまりモノを買わないのですか?

パンツァー フィンランドでは、ショッピングは「低所得の若い女性の趣味」という観念があります。これは統計データに基づくもので、私の個人的な印象で言っているのではありません。私自身、買い物が楽しいと思ったことは一度もないんですよ。

 ワークショップ終了時、参加者からは「好きな家事、嫌いな家事は人によって意見が異なるのが面白かった。夫婦の中でも、互いの好きなものを生かして、うまく分業できたらいい」という感想が聞かれました。確かに今回は、様々な「家事に対する思い」を聞くことができました。ほとんどの家事が嫌いな記者も、「掃除はきれいになると達成感がある」「料理はクリエーティブ」という意見を聞くと、なるほどそう思えば苦じゃなくなるかも・・・という気持ちに。読者の方も、夫婦の家事分担を見直す際には、好き嫌いを語ることから始めてみると、いいかもしれません。また、「片付けが大変」という家庭では、パンツァーさんの指摘を参考に「そもそもモノが多過ぎないか」を点検してみては、いかがでしょうか。

(取材・文・撮影/星野ハイジ)

 イベント「未来の家庭像を考える」概要 http://finstitute2.peatix.com/view