仕事は復帰できたけれど、息子がいない状態が寂しくて…

 仕事自体は苦労なく復帰できました。でも、そばに息子がいない状態が、本当に寂しくて。復帰して4カ月のとき、「もう仕事をやめたい」と妻に打ち明けました。すると今度は妻も納得してくれた。異国の地で一人で子育てをするのは大変だったのだと思います。妻も私も、「私達は私達の幸せを選ぼう。家族は一緒が一番だよね」という結論を出しました。それで私は会社を辞め、再びアメリカへ。このとき私は、「これからは、この子とずっと一緒にいられる生き方をしよう」と心に決めました。在宅でできる仕事を探して翻訳という仕事に出会い、今に至るというわけです。

 女性の社会進出と同時に、男性の家庭進出が必要だというのは、昔からいわれています。それなのに、なかなか進まないのは、意識の問題。制度は整ってきているのに、「男は仕事、女は家庭」という意識が日本はいまだに根強い。

 今、私は「秘密結社 主夫の友」という団体を結成しています。「日本に主夫を増やす」という目標を掲げて発信活動を行っているのですが、本当の目的は、「選択肢を増やす」こと。夫婦どちらかが負担を抱え込むのではなく、状況に応じて、柔軟に生きられる社会になってほしいと思います。

 自分と違う考えでも、異なる3つの方向から耳にすると意識変革が起こるといいます。だから皆さんも、こんな変な人がいるよ、と周囲5人くらいの人に伝えてください。発信を続けることで、日本の意識も変えられるんじゃないかと思います。

 続いてミカ・パンツァー氏。パンツァー氏は、フィンランド社会に洗濯機、冷蔵庫、携帯電話が登場した歴史を振り返りながら、技術の捉え方が男女で異なることを指摘しました。

パンツァー氏のお話

 1950年代以降のフィンランドにおいて、最も大きな影響を与えた技術は、洗濯機と冷蔵庫でした。

 洗濯機によって、女性は、過去千年以上も続いていた「川辺に洗濯をしに行く生活」から解放された。また、冷蔵庫により女性は、食料の調達に頭を悩ます必要が無くなり、週末は余暇を楽しめるようになりました。しかし女性が洗濯機を熱望したとき、男達は驚いて、そのとき初めて「家事に効率性が必要だ」ということを認識したのです。「今こそ私達は効率的にならなければ。洗濯を楽にするために貯金を使わなければ」と気づいたのでした。