「先の見えない時代」を家族で生き抜くために

 まだ小さい子ども達が、療育の必要な障害があると分かるかもしれません。あるいは、5年後、10年後に、僕が、妻が、まったく違うキャリアビジョンを描いて、地方で暮らしたいと思う可能性だってゼロではありません。海外に行く可能性もあります。つまり、ものすごく“変動要因”の多い状況です。

 それなのに年収の数倍から10数倍のローンを背負って、住む家を何十年も固定する決断をするというのは……僕は「え、ちょっと待って」と思ってしまうのです。

 家を買ったことで、子どもの教育環境を考える際の選択肢が狭まったり、夫婦それぞれのキャリア面でのチャレンジがしづらくなったりするのはもったいない! 家族全員が自由にアクティブに人生の選択ができるように、家を買うのは年を取ってからでいいよね、と妻とも話しています。子どもが独立して夫婦二人暮らしになってからでもいいくらいですね。

(もちろん、貸したり売ったりすればよいのですが、不動産購入や運用はやはり、まだ一般の方々にはハードルが高いのが現実です)

 では、逆に何にお金をかけたいと思うのか。

 僕はブランド物の服や高級車には興味はありませんが、一番惜しみなくお金をかけてもいいと思っていることは二つあって、一つは「子どもの可能性を開く経験や学習機会」です。

 子どもがちょっとでも「読みたい」という意思を見せた絵本は冊数をあまり気にせずに買い与えるようにしていますし、習い事も本人が興味を持ったものはできるだけ体験させるようにしています。本人が「やりたい!」と言ったから入会金を払ったのに行かなくなる、というありがちなムダも生じますが、それもまた体験と理解するようにして……(苦笑)。

 子どもの可能性を広げる体験や学習機会には、惜しまずお金を使っていきたいというのが僕の価値観です。

保育にお金がかかるから仕事を辞める人に「ちょっと待って!」

 お金を惜しむべきではないと考えていることのもう一つは、「子育てサポート」。僕の仕事にも通じるテーマです。

 近隣に頼れる親族がいる場合は別ですが、都会で夫婦で働きながら子育てをするのは大変なハードワークです。少しでも育児に余裕を持たせるために保育施設やベビーシッターサービスを活用することは、健全な生活を維持するために不可欠だと感じています。少しでも多くの人がもっと気軽に子育てサポートを利用できる社会になるように、僕も日々、国や行政を巻き込みながら奮闘しています。

 そんな活動をしながら実感するのは、世の中には「預けてまで働くことはオカネのムダ」という誤解がまだまだ多いなということです。

 「保育にかかるお金を差し引いたら、収入として残るお金は微々たるもの。だったら働かないほうがいい」。そういう理由で働くことを諦めたり、キャリアを手放してしまったりする女性はまだまだ多いという現実。僕は「ちょっと待ってください!」と止めたくなります。

 働いて得られる収入というのは、その時点で手にする金額だけを意味するものではありません。「将来のキャリアに向けてのステップ構築」という“見えない収入”もあるのです。