椅子に座っていられない、給食を20分以内に食べられない、立ったまま靴を履き替えられない…。小学校生活に必要な当たり前のことができない子ども達が増えてきているといいます。子どもが小学校生活をスムーズに始めるために、親はどんなことに気を付けてあげるといいのでしょうか? 『発達が気になる子の「できる」を増やすからだ遊び』の著者である笹田哲先生に聞きました。前編、後編の2回に分けてお送りします。

スポーツ教室では、学校生活で必要な動きは身に付かない

 「小学校を訪問して学習や給食、掃除をする場面を見ると、体の使い方の効率が悪く、不器用な子どもが多い」と笹田先生は指摘します。

 「昔なら公園で木に登ったり、土手を駆け回ったりしていたのが、今は座りっぱなしでゲームをしたり本を読んだりしています。また、都市部を中心に祖父母と同居する世帯が少なく、姿勢を正す、服を畳む、箸の持ち方など、食事やマナーに関する知恵や学びを得る機会が少なくなりました」

 「一方、サッカー、野球、水泳、体操などのスポーツ教室に通わせている傾向はかなり高くなっています。そのため、体力や筋力をつけるとか、逆上がりや水泳ができるなど、運動の技術を身に付けている子どもは多いです。その反面、ランドセルに物をきちんとしまう、限られた時間で体操着に着替えたり給食を食べたりする、といった日々の学校生活で必要な動きが身に付いていません。小学校入学前に、『技』ではなく、『体の上手な使い方』を身に付けてほしいですね」

 単に運動ができる体ではなく、姿勢よく椅子に座り続ける、素早く立つ、上手にバランスを取る、指先を使うなど、基本の動きや姿勢を保つことができる体づくりが重要のようです。

早く書けない、書くのに疲れるという子どもは半数

 基本の動きの中で特に気を付けたいのが、鉛筆の持ち方だそう。

 「調査をしたところ、普通学級で正しく鉛筆を持てる子どもは2割しかいませんでした。一方、このままの持ち方を続けていると早く書けない、書くのに疲れると思われる子どもは半数近くいました」