子育てから仕事から夫婦関係から社会問題まで、働く母とはなんと多くの顔を持って生きていることだろう。最愛の息子を育てながら小説家として活躍する川上未映子さんが、素敵も嘆きもぜんぶ詰め込んだ日々を全16回にわたりDUAL読者にお届けします。第1回のテーマは早期教育について、です!

 ああ、わたしはいったい何を生んで、何を育てているのだろう、いや、もちろんそれは人間なのだけれど……と今日もフレシネを飲んで考えた。

 わたしには3歳7カ月になる息子がいる。

 ありがたいことに大きなケガも病気もしたこともなく、生後11カ月で運良く入れた認証保育園に、毎日機嫌よく通っている。親に似てとてつもなくおしゃべりで、目下ウルトラマンのことしか考えていない典型的な3歳児。

 そんな息子は、なぜなのか、現在3つの習い事をしているのである。

 もともとわたしは子どもにたいして「どうか犯罪者だけにはならないでください」というようなハードルの低すぎる願いしか持っておらず、学歴や早期教育的なものに、いっさい興味がなかった。

 興味がないというよりは持てないというか。だってわたし自身にその体験や有り難さみたいなものがないわけだから、なんていうの、そもそも熱心になんかなれないのである。しかし気がつけば、水泳とリトミック、そして英語教室に通わせているのである。

「これはあかんで…」と青くなり

 そもそもの動機は、わたしの体力がもたない、ということだった。

 いや、平日ずっと保育園なんだから土日くらいべったりフルで遊んでやりなよ……と自分自身につっこむ気持ちも確かにあるんだけれど、しかし、そうは言っても土日は長い。毎週毎週、どこかに出かけるとかイベントを入れるわけにもいかないし(そんな気力ない)、3歳男児なんて、公園をよっつハシゴしても何をしてもまだ元気で、考えてみれば、働く親には休日というものがないのである。

 「これはあかんで……」と静かに青くなったわたし。

 なんとか、本人もテンション高めで心の底から楽しむことができる、そしてできればためになるような場所はないんかいなということで、最終的に土日で都合5時間ほどを過ごす、習い事に行き着いたのだった。

 最初は「歌とか、楽しいやん」ということで、近所のリトミックへ。送迎も自転車でびゅっと5分。それから、風邪がひきにくくなる&体力つくよね、ということで水泳に。こちらも近所。しばらくこのふたつだったのだけれど、わたしはふと、恐ろしいことに気がついた。