【ケース③ 阿部家の場合】

阿部寛子さん・要さん(仮名)……二人とも会社で責任のある立場。帰宅が20時を越えることも珍しくない。
子どもは勇二くん(仮名)……都内の公立小学校4年生。
宿題の量……1時間では終わらないくらいの量。

量が多過ぎる、指導が熱心過ぎる先生に困っている

 宿題を歓迎する保護者の希望に応えてなのだろうか、中にはたくさんの量の宿題を出す先生もいる。学習指導に熱心なのは保護者としてはありがたいのだが、保護者の目から見ても、明らかに宿題の量が多過ぎると感じるときがあるという。

 「4年生でも、遅くとも22時過ぎには寝てほしいのに、それまでに宿題が終わらないときも珍しくない。いくらなんでも多過ぎるのではと思います」と寛子さんも要さんも首をかしげる。

 さらにびっくりするのは、宿題を忘れた、もしくはできなかったときの先生の対応だ。

 宿題をもう一度やってくるように指示されるのではなく、子ども達にペナルティー(警告)を出すのだという。

 「連絡帳の後ろにカードを差し込むポケットがあって、本人と保護者にイエローカード、レッドカードを出すんです。イエローカードがたまると、つまり何回か宿題をしてこないとレッドカード。そうなると先生から電話で『学校に来てください』と呼び出されます。でも、先生がいる時間帯に学校へは行けないので、以前呼び出しを受けたときは電話で話しました」と寛子さん。

 また別のクラスでは夜、親子で学校に呼び出されたケースもあった。

 「その先生からは『21時30分までは私は学校にいますので、21時までに親子で来てください』と言われたそうです。親だけならともかく、子どもまで……。ますます寝る時間が遅くなってしまいます」

親のサポートが必要なのは低学年のうちだけ

 ただし、宿題をするように言う促し、丸つけ、連絡帳への記入など、親のサポートが必要なのは低学年のうちだけとのこと。高学年になるにつれて、徐々に手離れしていくようだ。4年生になった勇二くんも、黙っていても自分で勉強する習慣が付いたので、寛子さんと要さんは宿題は本人に任せているという。

必ず「褒める」で締めくくる

 勇二くんの宿題を毎日見ていたころは、「どうしてやってないの?」「こんな簡単なことが分からないの?」などと思わずネガティブな言葉が口を突いて出ていた寛子さん。「自分の体験から言えることは、子どもの宿題を見ている間、叱らないで済むことはまずあり得ません」

 ただし、叱ることとセットで、褒めることも意識的に実践。「最後は子どものいいところを褒める言葉かけで締めくくるんです。叱られたまま夜ベッドに入ったり、朝学校に行ったりすると子どもがかわいそうなので、『字が上手になったね』『最近頑張ってるね』などと褒めてから宿題タイムを終えるようにしていました」

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 どうして、公立の小学校でも毎日のように宿題が出るようになったのか。そもそも、学校の宿題とはどんな目的、どんな考えの下に出されているのか。

 次回は、都内の公立小学校の先生達に宿題に対する基本的な考え方と、毎日のように宿題を出す理由を聞いていきます。

(文/渋谷康人)