これが本当の締めくくり。父母への成果報告

 報酬金額予想や、実際の金額と照らし合わせてより深く考察することで、子ども達は自分達の仕事ぶりを正確に把握できたようです。それをパワーポイントにまとめ、夕方の閉塾式に備えます。閉塾式では保護者に成果を報告しなくてはなりません。子ども達は両親や兄弟に自身の成長ぶりを披露することができるでしょうか。

 パワーポイントの操作も、もちろん社員自ら行います。大人でも苦労するような機能を見事に使いこなす子ども達。写真データを挿入したり、文字をアニメーションのように動かしたり、随所に工夫を施します。さらにセリフを分担し、大きな声ではっきり言えるように練習。時間いっぱい使い、リハーサルにも余念がありません。

報告用のパワーポイントをつくる子ども達。集中してつくったおかげで、予定よりも早く完成させることができた
報告用のパワーポイントをつくる子ども達。集中してつくったおかげで、予定よりも早く完成させることができた

 報告の準備が終わると、黒板の前に立った学生スタッフが「みなさん、ここでプレゼントがあります! 今回、楽しい企画を用意しました。がんばって稼いだお給料を使って遊べますよ」。起業塾から子ども達へうれしいサプライズです。別室に移動すると、射的や輪投げ、塾長クイズなどの露店がずらり並んでいます。それを見た子ども達はそれぞれのブースへダッシュします。「わあ! 外れた~」「やった! 入ったよ!」と、先ほどまでとは打って変わって大はしゃぎの子ども達。充実感が表情に表れています。

時間いっぱいまで遊ぶ子ども達。昨年までの起業塾では稼いだシープを使う機会がなかったため、今回からこのお楽しみ会が導入された
時間いっぱいまで遊ぶ子ども達。昨年までの起業塾では稼いだシープを使う機会がなかったため、今回からこのお楽しみ会が導入された

 夕方、塾長の発声で閉塾式がスタート。子ども達の成果報告を聞き、保護者のはみなさん感慨深げな表情を浮かべていました。黒字、赤字という結果は抜きにして、子ども達は確実に成長を遂げたようです。それが伝わって、喜んでいるのでした。小学6年生の息子が参加しているというお母さんは、「学校では教えてもらえないことを起業塾で知ることができて、それが楽しいみたいです」とにっこり。「お母さん、これ知ってる?」なんて難しい話題を振ってくることもあるのだそう。

「こうした子ども時代ならではの体験をさせてあげることが、子ども達の新たな可能性を見つけることに繋がります。小学生で起業を経験したことがある子なんてそうそういないでしょう(笑)。現在は”社会が学校化している”といわれ、価値観がどんどん画一化しています。こうした学校ではできない特別な体験を、親はどんどん見つけてあげてください」と藤川さん。

 起業を通じて、一回りも二回りも成長した子ども達。大人達との本気のやり取りや、ここで出会った仲間達と協力してやり遂げた喜びは、子ども達のこれからにとって大きな自信になるでしょう。「来年も参加したい!」と言い残し、去っていった子ども達の笑顔は、この上なくまぶしいものでした。

マイクを順にまわしながら、全員で発表をする子ども達
マイクを順にまわしながら、全員で発表をする子ども達

最後は起業塾の修了書を手に、みんなで仲良く記念撮影
最後は起業塾の修了書を手に、みんなで仲良く記念撮影

前編 職業体験ではなく、子どもの力で「起業」する塾
小学生の作った会社がJFE工場見学をプロデュース
後編 運命の決算日!小学生が作った会社は黒字を出せたか

(取材・構成/小沼理[かみゆ] 取材・文/信藤舞子 写真/田口沙織)