「目」を搭載して大幅に進化した「ルンバ980」

 10月に発売されたルンバ980は、“ルンバ第2章”とも言えるほど大幅に進化したモデルと言える。

 ルンバシリーズというと、縦横無尽に、まるでランダムに動いているかのような掃除スタイルが大きな特徴となっていた。

 掃除をスタートすると大きく円弧を描きながら広がっていき、壁にぶつかるとまずは壁沿いに掃除を始める。壁沿いの掃除から次にフロアの掃除に移るが、フロア掃除では家具や壁などにぶつかるたびに方向を転換していく。全く法則性のないような動きを繰り返しながら、最終的にはフロア全体を最低でも4回はさまざまな角度から走破するというのがルンバシリーズの元々の特徴だった。

 これは赤外線センサーを中心とした低価格なセンサーと、動きを司るプログラムの工夫だけで、部屋の大きさや形がわからない状況でも部屋全体を掃除できるようにする戦略によるものだ。できることなら部屋の大きさや形を把握し、自機の位置を把握しながら、掃除し残しのないように部屋中をくまなく掃除することが望ましい。しかしルンバシリーズは10年以上前から家庭用電化製品として市販しており、当初そのような機能を搭載することは技術面でも価格面でも困難だった。そういう意味では苦肉の策とも言えるかもしれないが、地雷除去ロボットなど軍事用途にも使われている同社のプログラム性能の高さがユーザーに十分な満足度を与えていた。

 しかし、そうしているうちに、他社から「SLAM」と呼ばれる機能を搭載するロボット掃除機が登場してきた。SLAMというのは「Simultaneous Localization And Mapping」の略で、「ローカリゼーション(自己位置把握)とマッピング(環境地図作成)を同時に行う」ことを表している。例えばネイトロボティクスの「Botvac(ボットバック)シリーズ」はレーザーレンジファインダー(レーザー距離計)を用いて壁との距離を計測し、マッピングと自己位置把握を行っている。

 最新のルンバ980は、同社のロボット掃除機としては初めて、このSLAMを搭載したのが大きな特徴となっている。

 実は同社が企業向けに販売しているコミュニケーションロボット「Ava 500」ではレーザーレンジファインダーを利用してSLAM機能を実現しているが、ルンバ980はレーザーレンジファインダーではなくカメラを利用している。

カメラでとらえた室内の“特徴点”を基にマッピング

 カメラを使う仕組みはこうだ。カメラでとらえた映像から、室内にある「特徴点」を記憶する。例えば部屋の角、エアコンの位置などさまざまだ。ルンバは縦横無尽に動き回るが、自機の位置と特徴点との位置関係を高速に処理することで自機のいる周囲のマップを作成し、同時に自機位置を把握しながら掃除をし続ける。

 要するに「エアコンがあそこにあったな、次はテレビが左側にあるから、少し前進してから右に曲がろう」といった感じで、特徴点をたどりながら部屋を進んでいくというわけだ。

 レーザーレンジファインダーではなくカメラを利用したのは、家電製品に搭載できる低価格なレーザーレンジファインダーの場合、近距離しか計測できないためだそうだ。

ルンバ980の本体上部にカメラが搭載されている
ルンバ980の本体上部にカメラが搭載されている

 しかし、カメラを利用しているとなると気になるのが、「暗い場所でも掃除できるのか?」ということ。最近のデジカメはセンサーが高感度化しているため、暗い場所でもフラッシュなしで撮影できるのは多くの人がご存じのところ。しかしそうは言っても真っ暗闇だと何も写らなくなってしまう。

 ルンバ980搭載のカメラも、真っ暗闇では機能しないそうだ。しかし多くの家庭では窓から明かりが差し込んでいたり、電子機器のインジケーターが明かりを放っていたりと、真っ暗になることは決して多くない。ほんの少しの光があれば、カメラで認識してマッピングすることが可能だという。

 では、カメラがふさがれたらどうなるのだろう。動画共有サービス「YouTube」などでは、ルンバに猫が乗っている動画などが公開されていることも多い。本体上部にカメラがあるのに、猫が乗っても機能するのだろうか?

 ルンバには車輪と本体下部にセンサーが搭載されており、そのどちらをも使うことで自機の動きを細かく検知している。本体下部の赤外線センサーは光学式マウスの動きを検知するのと似たような働きで、車輪のセンサーがボール式マウスのボールの役割と思えばわかりやすいだろうか。真っ暗な部屋に進入した場合、猫が乗ったりしてカメラが機能しなくなった場合には、これらのセンサーを利用して自機位置を把握し、マッピングが再開できるまで自律走行を続けるとのことだ。

発表会では「ルンバに猫が乗ったら?」と想定したデモが行われた。カメラが機能しなくてもマッピングと自己位置把握の機能は維持できるという
発表会では「ルンバに猫が乗ったら?」と想定したデモが行われた。カメラが機能しなくてもマッピングと自己位置把握の機能は維持できるという

 完全に真っ暗になった場合は機能しないと書いたが、その場合は現在併売されている従来のハイエンドモデル「ルンバ800シリーズ」と同様の動きによって部屋を掃除する。二重三重にさまざまな場合を想定して動いているというわけだ。