千葉市と千葉大学が共同で2010年から実施している、子どもが自分達の力で「起業」を経験する「西千葉子ども起業塾」。そこでの体験はいわゆる「職業体験」ではなく、銀行から融資を受け、千葉市内にある会社の依頼に応え、擬似通貨を用いて黒字を目指すという実際の起業に限りなく近いものになります。大人も顔負けの現実的な起業プログラムで、子ども達は何を学ぶのでしょうか。3回に分けてリポートします。

前編 職業体験ではなく、子どもの力で「起業」する塾
中編 子ども達だけでJFEの工場見学をプロデュース!
後編 起業を体験することにより子ども達が学び取ったこと

起業を通してここでしかできない「体験」を

 千葉大学と千葉市が、千葉市在住の小学4年生から6年生、これまで同プログラムに参加したことのある中学生を対象にして開いている「西千葉子ども起業塾」。ここで子ども達は、会社から与えられた仕事をこなすだけのいわゆる「職業体験」ではなく、自分達の会社を一から立ち上げる「起業」を経験します。

 最終目標はクライアントに満足してもらい、黒字を出すこと。使用するのは擬似通貨ですが、そのプロセスは実際の社会とほとんど同じで、子ども達は会社の仕組みや仕事をする責任をリアルに体験することになります。

初回には熊谷俊人千葉市長も登場。子ども達と名刺交換をした
初回には熊谷俊人千葉市長も登場。子ども達と名刺交換をした

 「ネットの発達によって情報が簡単に手に入るようになりましたが、それは子どもにとって独自性がなく、可能性を伸ばしてあげられるものではありません。今、子ども達に必要なのは子どもならではの『体験』です

 そう話すのは、起業塾を統括する千葉大学教育学部の藤川大祐教授。

 「昔であれば子どもは外で遊ばせておくだけで自然とコミュニティーを形成していました。しかし今、子どもは放っておくとネットで時間を浪費してしまう。そうならないためには、親がこうした体験ができるイベントを見つけてあげることが必要です

 「また、起業塾に通う子どもは皆別々の地域から通ってきています。例えば学校でうまくいっていない子どもでも、場所を変えることで自分の個性を発見できる場合もあります。学校と家以外の場所があることで、子どもは様々な価値観に触れ、自分の新たな可能性に気づくことができるんです