幼稚園受験の鍵は父親が握っているのではないか、と気づいた

 息子の回答に一喜一憂する私達ではあったが、実際のお受験面接でどれだけ子どもの言ったことや態度が合否に関わってくるのかは、正直分からない。子どもが泣いてしまったり、うまく答えられなかったり、頼まれていないのに歌を一曲披露したり、それでも受かったという話はよく聞く。お受験クラスの先生に聞いたところでは、子どもと接する親の態度こそ、よく見られるのだそうだ。

 例えば、子どもが落ち着いていられないとき、質問に答えていない親のほうがそれにきちんと対応するかどうか。特に、お父さんがちゃんと子どもを見ているか、お母さんに任せっきりじゃないかが見られるという。あとは、子どもが上履きを履こうとしている場面などで、すぐにお母さんが手伝ってしまわないかどうかも大きなポイントなのだそうだ。まさに、普段の親の接し方が問われるということだ。

 先生の話を聞いたり、模擬面接を受けたりする過程で気づいたことがある。

 幼稚園受験は母親が肝だが、実は父親が鍵を握っているのではないか、と。

 恐らくは、母親がママ友などから情報収集して、お受験対策にも力を入れている家庭が多いことは容易に想像がつく。父親はどちらかというと気乗りするまで時間がかかり、お受験対策にも協力する時間があまりなかったりするのではないか。だからこそ、本番の面接では、両親の考え方の方向性がマッチしているかどうかが問われ、父親の子どもへの接し方が見られるのではないか。

 さて、その点、うちの場合はどうだったかというと、以前にも書いたように、夫も最初は「お受験、はぁ?」という感じだったのだが、息子がお受験クラスに通ったり模擬面接を経験したりしているうちに、そして入園を希望する幼稚園のことをよく知るにしたがって、徐々に「自分事化」できてきたように思う。もとより、人にインタビューすることをなりわいとしている人間なので、面接のコミュニケーションで失敗することもまぁないだろう。むしろ、本番の面接で息子がどんなふうに答えて、どんな態度を取るのかを、楽しみにしているようだった。

夫にとっての“鬼門”は、「全身紺」という服装ルール

 ただ一つ問題があるとしたら、服装のことだった。いつからなのか、幼稚園受験ファッションは、全身紺と決まっている。女性は、紺のスーツ、刺しゅうや柄や白の縁取りや金のボタンもない、紺一色。男性も光沢も織り柄もない紺のスーツに、地味なブルー系のネクタイが定番。就職活動中の大学生とほぼ一緒。

 それが夫にとっては理解不能らしい。「同じものを着ていればいいなんて、思考停止だ」と事あるごとに言っていた。私もその気持ちは分かる。面接を受けるのにふさわしいきちんとした服装であればいいだけで、そこまで画一的である必要はないと思う。幼稚園の側だって、「紺でなければ落とします」なんてことは絶対ないだろうとも思う。しかも、会社勤めのお父さんと違い、うちの場合は、スーツのバリエーションがないため、そのために購入しなければならないというのに若干の抵抗を感じてしまう気持ちも分からないでもない。

 でもね。服装程度のことなら、いいじゃない。その程度のことでいいなら、喜んで着ようよ、息子のために。と思うのだが……。

 果たして、夫は納得して紺のスーツを買って、面接に臨んだのでしょうか? そして、面接の結果は? どうなったのかは、次ページの「夫のアトコメ」と、次回記事にて詳しく書かせていただきます。