模擬面接での息子にとって“鬼門”の質問は、「好きな料理」
模擬面接とはいえ、いつもクラスで会っている先生からの質問なので、息子も緊張することなく答えている様子だった。
でも、とにかく椅子に座っていられない。
体をゆらゆら動かしたり、私の膝に座ってきたり、部屋中を走り回ったり、やりたい放題。親も気が気じゃなくて、息子のほうに気を取られているうちに、質問への答えがおろそかになったりしてしまう。こりゃあかん。
揚げ句の果てに、こんな言葉も飛び出した。
「今日は何を食べてきましたか?」(先生)
「チョコ」(虎)
「チョコ? お母さんの料理たくさん食べていると思うけど、どんなものが好きですか?」(先生)
「う~ん、分かんない」(虎)
おいおい。虎! これじゃぁ、お菓子で朝ごはんを済ませたみたいじゃないか。確かに、この日の朝は、時間がなくて、チョコ味のシリアルでお茶を濁した。毎回、完璧なバランスのよい食事を出しているわけではないけれど、それなりに母も色々考えながらごはんを作っていたんだぞ。その労力は、「チョコ」の一言で全部吹っ飛んだよ。あぁ、もう当面シリアルはお預けにしよう。特にチョコ味は。面接官役の先生の苦笑が胸に痛かった。
模擬面接後も、息子との何気ない会話の中で「虎はどんな料理が好き?」とか「ママの料理で何が好き?」とか度々聞いてみたのだが、まともな答えが返ってきたためしがない。時には、「ハムチーズ」とか「のり」とかいう答えが返ってきて、「それ、料理じゃないから」と夫から突っ込まれる場面あり。時には「(ママの料理は)きらい」とあんまりな答えが返ってきて、ショックを受けて打ちひしがれる母の姿あり。
わざとやっているのか天然なのか分からないのだが、彼にとって料理の質問は鬼門だった。本番で聞かれないことをひたすら願う父母なのだった。