夫婦で働きながら子育てをしているDUAL世帯において、父親が果たすべき役割について考える連載「“PaPa力”アカデミー」。勉強は学校に預けていれば問題ないと考えている親は多いと思いますが、サイエンスライターとして教育の現場を長年見続けてきた山村紳一郎さんは「現在の学校教育だけでは子どもの学ぶ力は育たない」と言います。和光大学非常勤講師として、また様々な教育番組の製作などで教育に携わる山村さんに、父親が子どものためにすべき家庭教育について伺いました。

山村紳一郎(やまむらしんいちろう)

1979年、東海大学海洋学部卒業。科学や技術の分野で取材・執筆活動を展開。月刊『子供の科学』(誠文堂新光社)などの雑誌や書籍を中心に、科学実験の開発・実演記事を執筆。2004年度からは和光大学の非常勤講師として、科学の楽しみ方を伝える。また、教育番組の製作協力、各種ドラマ番組の科学監修なども多く行う。

「勉強は学校で教わる」では現代は通用しない

【ポイント】
・子どもの生活や学校教育の現場が複雑化し、これまでのような先生と生徒の信頼関係が築きにくくなっている
・子どもにまず学ばせたいのは知識ではなく勉強の面白さ。今、それを教える主体は学校から家庭にシフトしている

──以前に山村さんにご登場いただいた夏休みの自由研究の記事(「夏休みの自由研究、極意は親子で一緒に楽しむこと」)では、「自由研究は子どもではなく親がするもの」という発言がありました。「学校のカリキュラムに任せていれば、子どもはしっかり勉強してくれるだろう」と考えている親は多いと思いますが、こうした考えは現在では通用しないということでしょうか。

 まず、前提として子ども達が勉強をするうえで最初に必要なことは何かを考えてください。それは「知識や技術を学ぶこと」ではなく、「勉強がいかに面白いかを知ること」です。しかし、今の学校教育ではそれが難しくなってきている。先生が子ども達に学ぶ面白さを伝えられる環境が崩れてきているんです。

 現在は子どもをめぐる問題が非常に複雑化していて、先生が子どもの問題に深く立ち入ることができにくくなってしまっています。

 私は昔よく居残りさせられていたのですが、それは先生が自分の時間を使って私の問題を一緒に考えてくれていたということ。すごくありがたかったと思っています。ところが今居残りをさせると、捉え方次第ですごく文句を言われるケースがありますよね。

 そういう状況下では、例えばかつてのように密接な関係を望む親や子がいても、先生も対応に臆病になってしまいます。

 最初に話した通り、小学校や中学校で子ども達が学ぶべきは知識や技術ではなく「面白い」という感覚です。

 ところが、今の学校はその面白さを根気強く伝えられる環境がつくりにくいようです。学校教育には、社会的協調性を学ぶことや、日常の安全確保など、重要な役割はありますが、これまでのような「勉強は学校だけで完結する」という考え方は成り立たないと思っていいでしょう。その分、家庭教育の重要性が高まっているんです。