教えようとするのではなく興味を持てる環境づくりを

【ポイント】
・子どもは親の何から影響を受けるかわからない。だからこそ、親の姿勢が重要になってくる
・本当に身につくのは教えたことではなく子どもが考えて覚えたこと。時間はかかるが長い目で見守ってあげる

 高度経済成長期の頃は、本当に親と子どもがコミュニケーションをとれる状態ではありませんでした。お父さんは仕事で夜遅くまで帰ってこないし、お母さんもご飯は作るけど教育には無関心。そういう時代に比べると、今は親子でご飯を食べる努力を意識的にしている方がたくさんいる。そういう意味では、一時期に比べるととても良くなっていると思いますよ。

 そして子どもと触れ合う時間が増えているからこそ、親の役割は重要です。

 私は小さい頃、プラモデルを作るのが好きでした。で、時々父親と一緒にやっていたんですが、難しいものになるとふたりで作っていても夜中までかかる。父親は次の日仕事なのに、一緒に夜中までやってるんですよ(笑)。だけどその姿が今の自分に活きていると思うことがあります。物理の実験をしていてもこの「終わるまでやめない」ということが染みついていて、他の人が帰っても自分だけ夜中までやっていたりとか。

 そんな風に、子どもは何から影響を受けるかわからないものです。こちらが知ってほしいと思ったことではなく、普段の何気ない姿勢から多くを吸収していることもある。だからこそ、親は何かを教えようとするのではなく、子どもが興味を持ったことに没頭できる環境をつくってあげてください。その第一歩が、お父さんが自分の仕事や興味のあることを話してみることですね。

 家族で食事をしているときに、お父さんとお母さんで仕事の話で盛り上がってみるのもいいと思います。最初は子どもはわからないでしょうが、ある日突然、自分の意見を言うようになるかもしれない。親はどうしても結果をすぐに欲しがりますが、結果なんてすぐには出ないものです。長い目で見守ってあげてください。

 教えたことではなく、子どもが自ら考えて身につけたことは、時間はかかるけど、その分残っていきますから。そしてそれが、子どもの生きる力になっていくと思います。

(取材・文/小沼理[かみゆ] 写真/猪又直之)