共働き家庭と片働き家庭が争うのは、戦略的に間違っている
本稿でお伝えしたいのは、子どもを取り巻く諸問題を考える際に、共働き家庭と片働き家庭が争うのは、戦略的に間違っている、ということです。なぜこんなことが起きるか、根本原因は子ども向けの財源が少ないから。小さなパイを巡って、共働きと片働きが争うのはあまりにばかげています。そもそもの問題は、パイが小さいことなのですから。
消費税が8%に上がったとき、政府のうたい文句は「全額社会保障に使われます」でした。当時、よく見たポスターの写真には、赤ちゃんを抱いた人が笑顔で写っており、増税は子育て支援のため、という印象を受けました。
ところが実状を見ると、社会保障4経費の中身はほとんど高齢者向けです。年金11.7兆円、医療11.2兆円、介護2.8兆円、そして子ども・子育て支援2.0兆円。これを知ったとき、「あのポスターは世論操作だったんだな」と思いました。日本の国家予算の大半が高齢者のために使われている事実から目をそらしたかったのでしょう。
私達が働き、買い物をした際に払う税金は、国や地方自治体の“巨大なお財布”に集められます。財政と言うと小難しい感じがしますが、実態は私やあなた、みんなのおカネを集めた巨大財布。そこに入っているおカネの使い道を決めるのは、政治です。政治は数の論理で決まることは、皆さんがご存じの通りです。
だから、少子化で子どものいる世帯が減る中、親が一人働いているか、二人働いているかで対立するのは、間違っています。それは、仲間割れのようなもの。「子どもの将来を真剣に考えるなら、もっと子どもに予算を使ってほしい」という意思を、私達親は明確に示さなくてはいけません。そのとき、共働き家庭と片働き家庭は「子ども第一」という共通目標に向かい協力する同士であるはず。
ママが働いているかどうか、子どもが保育園に通うか幼稚園に通うかといった、小さな違いで分断され、いがみ合っている余裕はないのです。
「高齢者VS若者・子ども」の対立構造も不毛。必要なのは、世代間協力
最後に大事なことを一つ、付け加えたいと思います。財政の問題を論じると「高齢者VS若者・子ども」の対立構造になりがちですが、これもまた、不毛です。多くの高齢者は誰かのおじいちゃん・おばあちゃん。孫の世代の幸せにつながる問題は、話せば分かるのではないでしょうか。ちょうど『文藝春秋』(2015年11月号)で児童文学作家の中川李枝子さんと対談した映画監督の宮崎駿さんの次の発言を読み、励まされる思いがしました。
「国が子どもたちに財源を使い、覚悟してゆとりある保育園を作ったら、日本はきっといい国になる。僕は年寄りの代表として(笑)、年寄りから子ども達にお金を回してほしいと思います」
こういうふうに考える高齢者の方々と私達子育て世代が協力し、政治を動かし、税金の使い方を次世代優先に変えていくこと。それが、遠回りなようで、私達が働きやすい環境をつくる正攻法ではないでしょうか。
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