消費税として集めたお金を、共働き家庭のみに厚く配分するのはおかしい

 消費税は親の就労形態を問わず、すべての家庭が払っています。子どもがいる人もいない人も、片働きの人も共働きの人も。そうやって皆から集めたお金を、共働き家庭のみに厚く配分するのは、おかしな話です。「すべての子ども・子育て家庭を対象」にするなら、親の就業形態を問わず、幼稚園児家庭にも同程度の補助をすべきなのに、現実はそうなっていません。

 もう一つの疑問は、こども園を含む既存の保育園入園審査の仕組みが、フルタイムやそれに近い人しか支援していないことです。フリーランスや自営業の方は、保育園入園審査で会社員(外勤)より点数が低く不利になったり、仕事をしていることを証明するため、膨大な資料を提出したりした経験をお持ちでしょう。

 都市部は保育園が足りないので、認可保育園だと入園競争は「フルタイム・共働き・外勤・祖父母遠方」からスタート。この要件を少しでも外れると、何百人、何千人といる待機の列に並ぶことになります。

こども園制度は、専業主婦の職場復帰を支援しない

 似た状況にあるのが、専業主婦から徐々に仕事に復帰しようとしている人達です。育休復帰のころを思い出せば分かるように、子どもと一緒に過ごす生活から、いきなりフルタイムの仕事に戻るのは容易ではありません。幼稚園ママは保育園ママと比べて、家事も育児も一人で担うことが多いので、ハードルはさらに高くなります。現実的には家のことを全部やりながら働きに出ようと思ったら、週1~2回のパートから始めることになります。

 幼稚園に預かり保育がついていると、こういうママ達も緩やかに仕事をスタートできます。実際、私もそういう例を身近に見てきました。一方、こども園になってしまうと、「専業主婦=1号」「(フルタイムに近い形で)働く母=2号」と分断線が引かれてしまい、前者が仕事を始める際のハードルが高くなってしまうのです。

 育休中に上の子どもが保育園を退園になる例が報道されましたが、何らかの事情でいったん仕事を辞めた人達は、もっと支援が手薄な状況に置かれながら、社会問題とさえ認識されていないのです。

 認定こども園の根本にある発想は、共働きの増加で保育園が足りない中、定員割れとなることもある幼稚園を受け皿にしよう、という“箱もの主義”でしょう。中央官庁で政策を作る人は、男女ともにフルタイムで働いているため、それ以外の人の生活実態に想像力が及ばないかもしれません。私自身もそうでした。子どもがこの春、幼稚園に転園して多様な就労形態(就労しないことを含む)の親と接して分かったことがたくさんあります。