映画にはない楽しみがある
観終わった後、長男が「このお芝居がもし震災の地で上演されたら、被災した人と一緒に観られるだろうか」とぽつりと言った。それをきっかけに震災のことや認知症のことなど、色々話した。
「観た後に、俺達がそういう話をするってことだけでも、このお芝居はすごいんじゃないかな」と、実はよく分かんなかったという次男。芝居の感想は一人ひとり違って当たり前だ。何かを分かる必要もない。
風煉ダンスのお芝居はスペクタクル感もたっぷり。舞台美術もいつもながら見ものだった。音楽の生演奏が舞台を盛り上げていた。月明かりは計算できない照明効果があったし、秋の虫の音もよかったよ、口々に言う。そうだよ、初めての野外劇鑑賞だもの、単純に楽しめればいいんだよ、と僕は思った。
映画好きの息子達だが、生身の役者さんが体を張って、その場限りの演技をし、それを五感で楽しむ、映画とは違う楽しみを存分に味わったことは間違いない。
(文/小栗雅裕 撮影/小野さやか)