社会に貢献できるだけではなく、自分の心も豊かになり、子どもの教育にも効果が高い「寄付」が注目を集めている。「お金の有効な使い方」として、親子で寄付を始めるデュアラーも増えている。あなたにあった寄付を探してみてはいかがだろうか。

寄付がもたらす幸福感は持続する

 日本人は寄付をしない国民だとよく言われている。欧米では、小さな子どもたちも自分のおもちゃやお小遣いを寄付する習慣があるが、日本ファンドレイジング協会の「寄付白書 2013」によれば、2012年の1年間の日本の個人寄付は6931億円。一方、寄付大国といわれるアメリカでは、2012年の年間寄付総額は、3162億ドル(約38兆円)で、そのうち72%(約27兆円)が個人寄付である(Giving USA 2013)。

 「日本人は寄付をしないと言われますが、決してそんなことはないのです」と語るのは、『世の中を良くして自分も幸福になれる「寄付」のすすめ』(東洋経済新報社)の著者、近藤由美さんだ。

「寄付をするとポジティブな感覚が生まれ、それが積み重なると、自分に対する自信、余裕のようなものが出てきます」と話す近藤由美さん
「寄付をするとポジティブな感覚が生まれ、それが積み重なると、自分に対する自信、余裕のようなものが出てきます」と話す近藤由美さん

 「昔からみんなでお金や労力を出しあって学校や橋を作ったりする自普請や、農具を共同購入したりお見舞金にする講や頼母子などの相互扶助の仕組みがありました。こうした地域の相互扶助は、長らく地域や集落の人を結びつける役割を担ってきました」。そんな近藤さんもかつては、寄付に対して「なんとなく胡散臭い感じがして、縁遠い世界だと思っていた」という。しかし、実際に寄付をしてみると、懐疑的な気持ちが一変した。

 「明らかに自分自身の心が豊かになりました。そしてその気持ちがずっと持続するのも不思議でした。心理学の最新研究によると人にお金や物を与えることによって、自分が使う以上の幸福感が得られることが実証されています。確かに、寄付をするとポジティブな感覚が生まれ、それが積み重なると、自分に対する自信、余裕のようなものが出てくるのがわかりました」。

 「今の社会は、他人と比べて何ができるのかといった評価、優劣によって人の価値が決められる傾向にあります。このため、自信を持てずにいる人も多いのではないでしょうか。寄付をすると、相手から様々な形で感謝の気持ちが返ってきます。感謝され、さらに“つながり”が深まるほど、自分自身の存在価値を無条件に受け入れられるようになってくる。つまり、寄付が、自己肯定感を生みだし、生きる喜びをリアルに感じさせてくれるのです」(近藤さん)。

 最近は、「無駄なことにお金を使いたくない」と考える若い人が、社会意識の高まりとともに、寄付に目を向け始めているという。「寄付を募るNPO(特定非営利活動)法人の数も年々増えていますし、東日本大震災を契機として寄付自体が認知されつつあります。忙しいデュアラーにとっても、お金の有意義な使い方として、おすすめできます」と近藤さんは語る。

 意外に知られていないが、寄付金には、寄付税制優遇措置もある。これにより、寄付金の最大約50%が戻ってくる。ただし、どんなNPO法人でも控除を受けられるわけではなく、この対象になるのは、都道府県、または指定都市などの所轄庁が認定した「認定NPO法人」のみだ(公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人などの公益法人も対象)。