統計データを使って、子育てや教育にまつわる「DUALな疑問」に答える本連載。今回は、近年問題視されている子どもの肥満に関して、都道府県別、東京都内23区別という2段階の地域データから、風土的・社会的要因を探っていきましょう。皆さんがお住まいのエリアの肥満率は、全体の中で高いでしょうか? 低いでしょうか?

 こんにちは。武蔵野大学講師の舞田敏彦です。今回は、子どもの肥満に関するお話です。

 昔に比べて、肥満の子どもが増えているといいます。それは統計にも表れており、例えば10歳の肥満傾向児の割合を見ると、私が生まれたころ、1977年は5.9%でしたが、2014年になると9.1%にまで高まっています(出典:文科省「学校保健統計調査」)。10歳の児童の1割近くが肥満と判定されているわけです。

 おそらく、運動量が減っていることが大きいでしょう。生活の機械化・オートメーション化が進むと同時に、子どもの外遊びも減少しています。時間・空間・仲間という、外遊びの条件となる3つの「間」(サンマ)も失われていますしね。また、偏った食事や睡眠時間の減少など、生活習慣の乱れも大きいと思われます。

子どもの肥満は北国で多い

 ところで、肥満の子どもの割合は地域によって違っており、それは単なる偶然ではなく、法則性を感じさせるものとなっています。肥満をもたらす風土的・社会的要因と言い換えてもよいでしょう。教育社会学を専攻する私としては、こういうマクロな部分に興味を持ちます。都道府県別、東京都内23区別という2段階の地域データを観察することで、それを導き出してみようと思います。

 まずは都道府県別です。文科省の「学校保健統計調査」には、年齢別・都道府県別の肥満傾向児の割合(以下、肥満率)が掲載されています。肥満傾向児とは、体重が当人の身長の標準体重より有意に高い者です。ここでは代表的な発達段階である10歳の県別肥満率を地図にしてみました(図1)。

 都道府県別に見ると、全国値が9.1%なのに対し、北海道の14.6%から京都府の6.0%まで幅広く分布しています。前者は後者の倍以上です。同じ日本国内でも、子どもの肥満率は地域で大きく異なっていることが分かります。

 地図の模様を見ると、北海道・東北が軒並み濃い色(10%超え)で染まっています。「子どもの肥満は北国で多い」という命題を立てられそうです。これは、雪で閉ざされた冬場の運動不足によると思われます。登下校も保護者に車で送迎してもらうことが多くなるでしょうし。

 また、2011年の東日本大震災の被災県も濃い色になっていますが、これは今述べた気候的要因だけでなく、震災による生活の変化(乱れ)も影響していると見られます。特に福島では、原発事故に伴う外出制限により、子どもの肥満率が高まっているそうです(「福島県、肥満の子増加 屋外活動制限が原因」日本経済新聞Web版 2012年12月26日)。当県では、子どもの屋内運動をうながす取組がなされています。