世帯年収が低いとジャンクフードに頼りがち

 肥満と貧困の関連については、米国でよく指摘されています。貧困層は安価でカロリーの高いジャンクフードに依存しがちなので、肥満になりやすいというのですが、似たようなことがわが国で起きていないとは限りません。母子世帯の貧困を特集したテレビ番組で、来る日も来る日も100円ハンバーガーやポテトチップを夕食代わりにしている子どもを見たことがありますが、これなどはその典型です。

 問題の解決にあたっては、学校における食育が重要な役割を果たすことになるでしょう。また学校保健安全法の第9条では、健康上の問題がある児童・生徒に対して必要な指導を行うことと定めています。いわゆる保健指導ですが、その対象には保護者も含まれます。必要な場合、このような機会を設けて保護者の意識を高めていく必要があります。言わずもがな、子どもは多くの時間を家庭で過ごすのですから。

 むろん保護者に対する啓発だけでは不十分で、貧困家庭に対する経済的支援も求められます。お金がなければ栄養のあるバランスのとれた食事を出すのは難しいのも事実。就学援助(学用品費や給食費等の支払いが困難な家庭になされる援助)が削減されつつありますが、図2の地図の模様がますます色濃くなるのではないか、という懸念を持ちます。

 子どもの健やかな発達は、社会全体で保障されるべきであると思います。

学力格差だけでなく健康格差にも注目を

 以上、47都道府県と東京都内23区の地域差を手掛かりにして、子どもの肥満の風土的・社会的要因について考えてみました。主なファインディングは、気候と肥満の関連、貧困と肥満の関連です。後者は家庭の経済状況とリンクした健康格差の一端をなすものとして注目されます。家庭環境による子どもの学力格差はよく議論されていますが、こちらの面にも関心が向けられるべきでしょう。

 次回は、子どもの習い事に関するお話です。「何歳の子にはどういう習い事をさせるのがいいか」という関心をお持ちの読者も多いことでしょう。どういう習い事がいいかという価値判断はできませんが、何歳の子の何%がこういう習い事をしているというデータはあります。信頼のおける官庁統計をもとに、判断の目安を得ていただければと思います。