ド素人になれるのが育児のいいところ

越澤太郎さん。妻は現在専業主婦で、2歳の男の子がいる。コピーライターとして、企業のインナーコミュニケーションや経営戦略の立案、ブランディングなどを行う
越澤太郎さん。妻は現在専業主婦で、2歳の男の子がいる。コピーライターとして、企業のインナーコミュニケーションや経営戦略の立案、ブランディングなどを行う

 男性が育休を取るのは妻や子どものサポートのためという理由が多いが、男性自身にとっても育休で得るものがある

 育休を2週間取得した越澤太郎さんも「育休中に哺乳瓶の口を買いに行って、色々なサイズがあることや取り扱いの注意点を初めて知りました。オムツを見て『よく考えられた構造だな』『この素材すげぇな』とか。見るもの触るもの、初めてのものばかりで新鮮でしたね」と、仕事ばかりだった自らの人生経験を広げるきっかけになったと話す。

 2カ月間取得した大山徹さんも、これに同意。育休中は新しい発見が多かったと話す。「妻の代わりに区の乳児健診・講座に出席したところ、他の出席者はもちろん母親ばかり。内容も母親向けで、母乳ケアのレクチャーで気まずい思いをして……。父親向けの話はないんだな、というのも一つの発見でした」

 女性もそうだが、男性もキャリアや人生経験を積むほど、新鮮な経験やおっかなびっくりな場面は少なくなっていく。だが育児は、これまでの人生経験をリセットして「おっかなびっくりな自分」を久々に経験する機会でもある。仕事を脇に置いて、父親として育児を集中的に行う育休を取った経験は、その後の仕事人生の幅を広げることにもつながるのだ。

大山徹さん。妻は会社員で、3歳半の男の子がいる。広告制作、特にデジタル事業を中心に担当。新規事業にも携わる
大山徹さん。妻は会社員で、3歳半の男の子がいる。広告制作、特にデジタル事業を中心に担当。新規事業にも携わる

 オムツメーカーのCMを制作してきた赤木さんは、「仕事とは違って育児については、すごい『ド素人』になるわけで。ド素人として新しい経験をするのは、企画の仕事をしている人間にとってはプラスになったと思います。確実に世界が広がった」と、育休を取った意義を振り返る。

「寝返りを打つことの大切さ、夜中に4時間ごとに泣いてたたき起こされるつらさ。独身のころは分からなかったことを、四六時中寄り添うことで身をもって体験できたのは、企画職として良かったと思っています」(赤木さん)。