ラーメンやファーストフードならよく食べるのはなぜ?

 体を動かすのが好きな子であれば、よく汗をかき代謝がいいので、料理では塩分を少し強くないと味覚でも物足りなく感じるという。ママの立場からすると、多くの育児書に薄味がよいと書かれているし、当然体によかれと思って薄味にしているのに…と思うはず。でも、特に男の子はそうした健康によい薄味よりも、かつ丼やラーメンといったような、味が濃い「男ごはん」みたいなものを好む傾向があるのだそうだ。

 「ママは自分が作ったり選んだりしたものをどれだけ食べられているかで判断しがちなのですが、食が細いと言われている子どもでも、ファストフードやラーメンなど、ママにとって『あまり取ってほしくない』食事ならたくさん食べるという子は意外と多いのです。わが子の食べる量が少なくて心配という人は、自分が考える栄養バランスのいい食事を引き続き出しながらも、子どもがよく食べる食事も時々取り入れて、『いっぱい食べた』『完食できた』という成功体験を積むことから始めてみてもいいのではないでしょうか」

パパとのラーメンは格別で普段食べない子が食べることも…(写真はイメージ)
パパとのラーメンは格別で普段食べない子が食べることも…(写真はイメージ)

 「男ごはん」ならパパが得意!という家庭もあるはず。食欲のスイッチを押すという目的で、パパが好きなものやパパの作る料理、パパが好きな味付けで作ったものを、週末などに取り入れてみるといいかもしれない。

 ここで一つ、ママに不安が出てくる。

 (栄養バランスがあまりよくない)男ごはんばかり食べていると、後々不健康な食生活になってしまうのではないだろうか――。

12歳前後で食事の意味を理解し始める

 「個人差もありますが、小学校中学年ごろまでは、体が欲しているものを食べたいという欲求が勝ちます。発達という観点では、他者で起きたことを事実として認識できるようになるのは12歳前後。例えば、親戚の人が病気になったときに『揚げ物ばかり食べていると健康によくない』という大人の話を聞いて、自分でも気を付けようと思えるのは大体それくらいの年齢なのです」

 逆にそれまでは、栄養バランスを本当に理解して主体的に食べることは難しい。

 「とはいえ、子どもに食事の大切さを伝えない、栄養バランスのいい食事を与えない、というのは違います。自分事に落とし込んで考えるのが難しくても、親が大事なこととして伝え続けてくれたことは子ども達はちゃんと覚えています。なかなか食べてくれなくて困ったり、せっかく作った食事を残されて落ち込んだりすることもあるかもしれませんが、『いつか必ず今より食べるときがくる』と思って、伝え続け、作り続けることが大切です。子ども達はそれぞれにスイッチを持っています。親がいいと思った食事を〝無理のない範囲で”続けていきましょう

 “無理のない範囲”というのは、家庭それぞれ。山本さんはあるケースを教えてくれた。