今は「嫌い」でも、30年後にきっともう一度読みたくなる

──のぶみさんには二人のお子さんがいらっしゃるんですよね。

 はい、かんたろうくん(10歳)とアンちゃん(7歳)がいます。この二人は、よく僕の絵本にも登場しています。だから彼らは、僕の描いた絵本が大好き。「自分の絵本」だと思っているんですね。読み聞かせると、必ず「もう一度、読んで!」と言うんです。それがうれしくて、うれしくて。そう言われるために描いているようなものです。

 ところが、この本だけは、「もう読まなくていい」って言われてしまいました。もちろん「もう一度、読んで!」もありません。ちょっとショックで、「この本、大丈夫かな」と心配になりました。

 しかし、彼らの様子をよく見ていると、ママに抱きついたり、「この本、嫌い」なんて言ったりして、ちょっと様子が違う。しばらく観察して分かったことは、「これはきっと、この本がつまらなかったんじゃないな」ということ。つまらない本のときは、こんな反応はしません。「つまらなかった」でおしまい。ここまで子ども達に強く拒絶されたのは、この本が初めてでした。だから、きっとそこには何かあるな、と思ったんです。

 お母さんがこの本を読んだときの反応は、とてもいい。でも、なぜか子どもからは嫌われる。「この本はお母さん向けなのかな」とも思ったけど、きっとそうじゃない。これだけ子どもが嫌がるからには、きっと子どもの心に強く訴えかける何かがあるんです。だからこの本は、やっぱり子ども向けの絵本なんです。

 子どものときは、「この本、嫌い!」かもしれない。でもきっと、彼らが大人になったとき、この本のことを思い出すはず。そして、「もう一度読んでみようかな」と思うでしょう。つまり、30年越しの「もう一度、読んで!」絵本なんですよ。

後編では『ママがおばけになっちゃった!』が出来上がりヒットするまでの秘話、のぶみさんが絵本作家になったきっかけ、そしてのぶみさん流の絵本の選び方について、お話を伺います。

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(取材・文/井上真花)