少食で悩んでいたのがウソのような時期がやがて来る

―― 好き嫌いを何とか克服しなきゃと思いつめたりはしなかったですか?

上田 むしろ、子ども達をよく観察していました。この食材の何が嫌いだから食べないんだろう? くさいかな、食感かな、と。

 1人の息子が、2歳くらいのとき、特に嫌いな様子はないのに、必ず青菜を口から出していたのです。チューインガムのように20分くらいずっとかんだ後、最後に出してしまっていたんです。奥歯ができ上がっていなかったから、擦り切れなかったんですね。双子のもう1人は少し体が大きく生まれていたためか、ちゃんと飲み込めていました。

 うちは双子だから、そうやって比較して分析もできたんです。でも、双子のように同じ条件の下に生まれて、1人が食べて1人が食べられないということは、もう「個性」と捉えるしかないんですよ。だから「なんで焼いた肉は食べられないのにソーセージは食べるんだろう」って悩んでいるお母さん、大丈夫です。大きくなったら絶対、焼き肉食べますから。

 それから、食べない野菜も揚げると案外食べるんですよね。例えばニンジンを素揚げにして塩やお醤油をかけたりすると、子どもが食べやすくなるんですよね。「こんなに大きなニンジンが食べられた!」という成功体験になると、次に行けますからね。

 子どものほうだって、毎回きっちり全部食べてほしいと言われても、きっと困っちゃいますよ。それよりも、お母さんが頑張って作ったんだからと無理矢理食べさせられるとか、食べないから与えないということのほうがよくないかもしれません。

 しかも、小さいころは食が細くて「どうしたら食べるかな」とか「残ったものをどうしよう」と悩んでいましたが、大きくなって食べ盛りになると、今度は1日に家のお米が1キロなくなるんですよ! 鶏肉が1人1枚じゃ足りないんですよ!

大事なのはお母さんがちゃんと食べること!

―― そういう時期が来るんですね。少食だった双子の息子さんも、育ち盛りにはもりもりと食べていたんですね。

上田 そうです、そうです。逆に食べ過ぎて悩んでいるお母さんもいらっしゃいますが、これも過度に太っていなければ心配いりません。

 それより、子育て中のお母さんのほうがちゃんと食べないと5年後、10年後病気になります! 子どもを元気に育てるためにも、気をつけなきゃいけないですよ。私の周りでも、子どもが小学校の高学年や中学校に入ったころ、体調を崩す方が結構いました。仕事を辞めなくてはいけなくなる人もいて。

―― そうなると、元も子もないですよね。

上田 子どもが小さいと、どうしても自分の食事はおざなりになってしまいがちなんですよね。1食抜いちゃったとか、パン1枚で済ませちゃったとかって。そうすると、今は元気でも必ず5年後10年後に不調に陥りやすい体質になってしまいます。病気にまではならなくても、冷え症になったり、体力が急に落ちてきたり、バランスは崩れてきてしまいますよ。

―― まるで経験しているかのような……。

上田 実は私自身、子どもが生まれてから食生活のバランスが崩れて、40代になって具合が悪いなと思ったら、健康診断で貧血の数値が出てしまったんです。幸い病気になるまでには至りませんでしたが。それ以降は気を付けるようになりました。

 例えばトーストだけしか食べられないときでも、プチトマトをパクッと口にするとか、冷ややっこを足すとか。どんなに忙しくても、意識してバランスを取るようにしたほうがいいと思います。

――後編では、ひと口ドーナツの作り方を教えてもらいます。

上田淳子
料理研究家。神戸生まれ。調理師の専門学校の西洋料理研究職員を経て渡欧。スイスやフランスのレストランやパン店、ハム・ソーセージ専門店などで修行を積む。帰国後は東京・下北沢にあるサロン・ド・テでシェフパテシエとして勤務。現在は吉祥寺にある自宅で料理とお菓子、およびワイン教室を主宰。 料理研究家として雑誌やTV出演などで活躍する一方、子どもの「食育」についての活動も行う。著書に『共働きごはん』(主婦の友社)、『中学・高校生のお弁当』(文化出版局)他、多数。ホームページはこちら

(文/相川直美 撮影/吉澤咲子 編集協力/Integra Software Services)