もう、“音楽のモード”から一生離れられない

 「自分の子どもに歌を作ってあげよう」なんてこともなくて……。もちろん、『おかあさんといっしょ』で歌を作らせていただいたときは一生懸命に、楽しく取り組ませていただいたけれど、「自分の子どものために歌を作ろう」ということでは全くなかったんです。

 あれは「モードが違った」のだなということに、最近やっと気がつきました。

 プリプリ時代、私には音楽しかなかったから、「音楽というモード」にどっぷりでした。音楽をやっている私が、恋をしたり、友達と遊んだり、ごはんを食べたりしていた。でも、子育てが始まると、四六時中、「お母さんモード」。「音楽をやっているお母さん」ではなく、「ただのお母さん」でした。そもそも私は、いつも目先のことで精一杯になるので、お母さんモード以外、ありえなかった。準備体操と称して1年に1回ライブをやっていた時も、「おつかれさまでしたー」の後は、もうお母さんでしかない。

 だから、プリプリを再結成することになったときは正直、心配でした。10年も「音楽じゃないモード」だったのが、すぐに切り替わるんだろうか、と。

 でも、1年くらいかけて準備している間に、徐々にモードが戻ってきたように思います。そして、今回のシングル『DREAM』を作ったときに確信しました。「私、もう音楽のモードからは一生離れられないだろうな」と。

 今は、音楽でやりたいことだらけ。「今度、こんなことしようよ」って言ってばかりで、レコード会社の人に「それはちょっと待ってください」なんて言われたりしています(笑)。

 本当の意味で自分がやりたいことをできるようになったんでしょうね。感覚とか、気持ちの持ちようとか、タイミングとか、いろんなものが合わさって、今、一番いい状態で音楽ができているように思います。

 そう思えるようになるまでに少し時間が掛かってしまったかもしれないけれど、それも、私が音楽から離れている10年、休憩している10年があったからこそたどり着けた境地。今、自分が納得できる音楽を作れている気がします。そして、音楽の世界に戻れたことの喜びをひしひしと感じています。

(ライター/松田亜子、撮影/稲垣純也)