昨今、いじめは低年齢化しているといいます。読者アンケートでも、「わが子がいじめを受けた年齢」の平均値は7.5歳でした。「わが子にはまだ早い」と思っていても、いじめ問題はすぐそこまで忍び寄っているかもしれません。特集3回目の今回は、「早期発見のために、親が注意すべきサイン」「子どもから打ち明けられたとき、やってはいけないこと」などを専門家に伺いました。

【子どものいじめ もしわが子がされたら…親の役割特集】
●読者の体験から見るいじめの実態と対処法
第1回 子どものいじめ 最初に受けた年齢は6歳が最多
第2回 いじめ 読者に聞いた「そのとき親はどうしたか」

●専門家に聞いた「親がすべきこと、できること」
第3回 いじめSOS打ち明けられたときの親のダメ対応は? ←今回はココ
第4回 いじめから逃げる、学校と連携…親ができる具体策

親に言えずに一人で抱え込む子もいる

 「いじめの深刻化を防ぐ一番の策は、親による“早期発見”です

「こたにがわ学園」の理事長を務める小谷川元一さん
「こたにがわ学園」の理事長を務める小谷川元一さん

 こう話すのは、25年間の教員生活を経て、現在は子育て・教育支援ホーム「こたにがわ学園」の理事長を務める小谷川元一さんだ。

 「本来なら教師は、子ども同士の席と席の間が少し離れたときからいじめを疑うくらいの目を持つべきですが、残念ながら気づけない教師もいる。今は若い教師の数が圧倒的に多く、経験豊富な教師があまりいないという現場の問題もあります。教師の育成は急務ですが、その一方で、お母さん、お父さんが“わが子もいじめられる子、いじめる子になってしまうのではないか”という危機意識を強く持って子どもを見守ってほしいと思います。毎日、子どもに接している親だからこそ発見できるいじめのサインがあるはずなのです

 親が早く気がつけば、いじめから子どもを救う手立てを講じることもできる。読者アンケートでも「もっと早く気づいてあげれば、早くにわが子を救ってあげられた」と後悔するママ・パパの声がいくつも挙がっていた。

 DUAL読者のケースでは、「子どもがいじめを受けていることにどのようにして気づいたか」という質問に「子どもから直接、聞いて知った」と答えた人が62.7%と一番多かったが、「わが子なら親に話してくれるはず」といった過信は禁物だ。小学校高学年以上になると、親に隠す子どもも多く、気づいたときには深刻化しているケースが多いという。

 いじめ問題に取り組むNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」の理事で、講演活動を行っている武田さち子さんは言う。

 「親に言えない理由はいくつかあります。例えば、親に言えば先生に伝わり、“告げ口がみんなにばれて報復されるかも”という恐れや、“親を悲しませたくない”という親を思う気持ち。また、思春期には自立心も芽生えますから、“自分で解決しなくては”と思い、一人で抱え込んでしまう子どもも多いのです」

 親の役割は、そういう打ち明けられない子どもがいることを肝に銘じ、子どものSOSを察知することだと2人の専門家は指摘する。

最後まで親を心配させまいと笑っていた

NPO法人「ジェントルハートプロジェクト」の理事の武田さち子さん
NPO法人「ジェントルハートプロジェクト」の理事の武田さち子さん

 最初は悪口や無視程度の軽いものでも、いじめはエスカレートしていく。親に言えず、いじめを知っている教師が何の手立ても講じなければ、子どもはギリギリまで追い詰められ、“命を絶つ”という選択をしても不思議はない。

 いじめ自殺が報道されると、世間は「親はなぜ気づかなかったのか」と自殺した児童の親を非難する傾向にある。だが、武田さんは言う。

 「たとえ世間で自殺が話題になっているときでも、親はわが子の死を想像することがなかなかできません。親にとって子どもの死は、自分の死以上に想像できないもの。私が保護者の相談に乗るとき、『お子さんはかなり追い詰められているのではありませんか』と聞いても、『そんなはずありません。テレビを見て笑っていますから』と言うお母さんがいます。いじめで自殺した子どもも同じで、多くの子が最後まで親を心配させまいと笑っていました。死ぬことを決意したことでかえって吹っ切れ、明るく振る舞う場合だってある。子どもの自殺を予知するというのは、非常に難しいことなのです

 だからこそ、親はできるだけ早く子どものSOSに気づかなければならないのだ。次ページでは、いじめられている子どもから発せられるサインはどういうものなのか、詳しく見ていこう。

<次ページからの内容>
・ 子どものSOSサインに要注意! 
・ 自殺の可能性もあるサインとは?
・ SOSに気づいたらどうすればいい?
・ 子どもから打ち明けられたときにやりがちな「ダメパターン」
・ 保育園や幼稚園でもいじめは起きている