「頼りにしている」――尊敬できる大人からの一言が子どもを変える
小学4年生のユウキ君(仮名)はおとなしい性格で、学校での勉強やスポーツが苦手。性格も幼く、クラスの中で気後れして、両親も心配していた。あるとき、アフタースクールの活動として料理の職人を招いて和食を学ぶプログラムにユウキ君は参加した。参加児童の中で一人だけ高学年だったユウキ君は市民先生に呼ばれ、皆の前でこう言われた。
「君が私の一番弟子だ」。
以来、料理の進行の補助役としてユウキ君は市民先生の手伝いをするようになり、何回かプログラムを重ねるうちに市民先生からこう声を掛けられた。「君がいてくれないと困る。今日も頼むよ!」。
尊敬する人に必要とされた経験はユウキ君を変えた。プログラムを終えた3カ月後には、ユウキ君の表情は見違えるように明るくなり、学校生活でも自信を取り戻していったという。
「この子は今、応援が必要なのだと、きっと市民先生は見抜いていたのだと思いますが、尊敬すべき大人から『頼りにしている』『君がいないと困る』という言葉をもらったことはユウキ君の自己肯定感を大きく育てたのだと思います。思春期の子どもには、このように大人の仲間入りをして、「あなたがいて助かった」という声をかけてもらうことが非常に効果的だと感じます。たとえ直接の言葉がなくても、様々なフィールドで活躍する大人との出会いは、将来に対する希望や『こんな素敵な大人になってみたい』というイメージを膨らませると思います」
(文/宮本恵理子)