「思春期は、『どんな大人になろうか』と迷う時期。その迷いはそのまま生活の至る所に表れます。部屋が散らかる子、髪形を突然変える子、音楽の趣味が変わる子など、“迷い”の表れ方は十人十色。親としては『この子はただ迷っているだけ』と冷静に受け止め、嵐が過ぎ去るのを待つのが賢明です

 学校生活に支障が出そうなくらい行き過ぎていれば、期限を設けるのも一つの方法。「今年の間は何も言わないけど、年が明けたらそろそろ学年が上がるんだから少し考えてね」など伝えてみるのがおすすめだという。

子どもが離れて寂しい親心の切り替え

 思春期を迎えると「子どもが急に離れていくようで寂しく感じる」という親も少なくない。親としても子離れが必要な時期だが、なかなか気持ちの切り替えが追い付かないのである。

 この寂しさを乗り切るための考え方として、三浦さんは「夫婦回帰」を提案する。

「子どもが小さいときは夫婦の会話も子ども中心で、お互いの日常や将来についてじっくり話す時間はほとんど取れませんよね。子どもに注いでいた関心を少しずつパートナーに戻していく。まずは夫婦の会話にかける時間を出産前のレベルまで戻すよう努めてみてください。両親がよく会話している、という情景は思春期の子ども達にとっても“安心して帰れる家庭”のベースになります

子どもの心の支えになる「第3の大人」

  「子どもが親から離れ始める思春期ならではの役割」として、特定非営利活動法人放課後NPOアフタースクール代表理事の平岩国泰さんが提案するのは「第3の大人」がもたらす効果だ。放課後の小学校を活用して子どもたちが多様な体験を重ねる「アフタースクール」を実践している平岩さんは、プレ思春期・思春期の子ども達の心の支えになるのが、親・学校の先生に次ぐ「第3の大人」であることを実感してきたという。

 「例えば、サッカークラブのコーチや尊敬できる塾講師といった“師”のような位置付けとなる大人の言葉は、思春期の子ども達には非常に響くようです。『親の言うことを聞くのは何となく嫌。でも大人にはなりたい』という微妙な気持ちに応えてくれる、社会人としての先輩と出会えるチャンスを子どもにできるだけたくさん与えるといいのではないでしょうか。私たちはアフタースクールで『市民先生』と呼んでたくさん招いています」

 アフタースクールの活動を始めて間もないころ、平岩さんが体験した実例としてこんな話がある。