ぱっと咲く花のように華やかな笑顔が印象的なタレントのサヘル・ローズさん。前回の記事では、4歳で孤児となり、孤児院から母となるフローラさんに引き取られ、紆余曲折を経て日本で暮らし始めたサヘルさんの半生をお伝えしました。生活のため必死に働くフローラさんは不在がちで、サヘルさんは寂しい思いをすることもありました。生活も、二人で何とかしのぐというギリギリのものでした。つらい日々を我慢して、互いに「強い母」と「強い娘」を演じていました。
 サヘルさんが中学生のころ、フローラさんは展示会でじゅうたんを売る仕事に転職。展示会があるときのみの限られた仕事なので、収入がゼロに近くなることもありました。また、サヘルさんはイラン人であることや貧乏であるという理由で、小学校高学年から学校でいじめられていましたが、それが中学校に入るとますますエスカレート。二人にとって最もつらい時期の一つだったと言います。

学校から帰ると、強いはずの母が泣いていた

「母は一番の私の理解者だけれど、仕事で落ち込んだときに母にグチを言ったりはしない。それは自分で解決する問題」とサヘルさん
「母は一番の私の理解者だけれど、仕事で落ち込んだときに母にグチを言ったりはしない。それは自分で解決する問題」とサヘルさん

 本当に苦しい時期でした。貧しいせいで色々と言われる。何でもっと普通の生活ができないんだろう、って。でも、朝から晩まで働きづめの母を苦しませたくないから、本音は言えない。学校でいじめられているのも隠して、母が安心する自分を演じなければいけないのがつらくて…。「何で私ばかりが頑張って、お母さんのために“強い娘”をやっているんだろう」と思っていました。でも、私だけではなかったんです

 あるとき、いつもより早く家に帰ったら、母がコーランを抱えながら部屋の隅で泣いていたことがありました。母の泣く姿を見たのは、イランの空港から日本に来るときの飛行機の中以来でしたから、本当にショックでした。私の前では、いつも強いお母さんだったから

 そのとき、「ああ、母も私が安心するように強い母を演じていたんだ」と気づきました。お互いにすごく遠慮をして、お互いのために無理していたんだって、何だか本当に申し訳なくなってしまって、無責任にも命を絶とうとしました。

 母と「死にたい」と言い合って、お互いの手を取り、死のうとしました。そのとき母の手が、もう最後かもしれないと思って握った手が、カサカサで血管が浮き出ているくらい痩せ細っていたのです。初めて会ったときは、本当にきれいで柔らかかったのに…。そして、顔にもたくさんしわができていて、抱きしめた背中も曲がっていた。そこで初めて、母が年を重ねていることに気がついたんです

 そしたら、なんとか死ぬ前にもう一回彼女に幸せをあげたいという強い気持ちが湧き起こってきて、思いとどまりました。この事件で、私も母も自分のすべてをさらけ出すことができるようになり、ぐっと距離が縮まりました。私達はお互いのために生きているということを、いっそう確信しました。

次ページから読める内容

  • 「大好きだよ」。親子でも言葉で伝えて
  • 娘にはできるだけたくさんの引き出しを
  • 生まれてきただけで、一人を幸せにしている

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